岩波現代文庫
魂鎮への道―BC級戦犯が問い続ける戦争

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  • サイズ 文庫判/ページ数 382p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006031893
  • NDC分類 329.67
  • Cコード C0136

内容説明

ニューギニア戦線での地獄の体験とは何か。いかなる状況下で戦争犯罪を犯したのか。巣鴨刑務所出獄後も戦争責任を直視し続けてきた元BC級戦犯(現在八六歳)の稀有な思索。過酷な戦場で無残な最期をとげた兵士と戦犯裁判を経て処刑されたBC級戦犯の姿を通して、日本の戦争と戦争責任・戦後責任を根本から問い直す。

目次

第1部 BC級戦犯としての体験(体験伝承のむずかしさ;刑死者たちの声を聞く;手負いになること―ぼくの戦争犯罪)
第2部 戦争犯罪と戦犯裁判(連合軍の犯罪;日本軍の犯罪)
第3部 戦争責任を戦後に問い続けて(松井石根大将を思う;勇戦敢闘できなかった死者のために;護送船からの手紙;BC級戦犯から見た東京裁判;スガモ・プリズンの衝撃;大本営参謀の戦争責任を問う)
第4部 今も魂鎮の意味を問いながら(日本軍を想い自衛隊の現在を考える;韓国・朝鮮人BC級戦犯が願うこと;魂鎮への道)

著者等紹介

飯田進[イイダススム]
1923(大正12)年京都府生まれ。43(昭和18)年、海軍民政府・資源調査隊員としてニューギニア島へ上陸。敗戦後オランダ軍に戦犯容疑者として拘引され、後に重労働二〇年の刑を受ける。50(昭和25)年にスガモ・プリズンに送還。現在、社会福祉法人「新生会」「青い鳥」の理事長を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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松本直哉

23
「多くの将兵の犠牲の上に現在の経済的繁栄」というような美化をかたくなに拒まずにいられないのは、ニューギニアの地獄の戦場で戦友の無数の無意味な死を目の当たりにしてきた著者だから。逆に言えば、このような美辞麗句に酔えるのは戦争の本当のむごさを知らない我々だから。著者が絶えず問うのは責任と正義。BC級戦犯としてほとんど無造作に恣意的に死刑宣告された戦友と、紙一重で免れた自分自身を隔てるものの不条理としか思えない壁。自らも加害者だった、加害者であることを強いられた体験についての、絞り出すような苦しい告白。2018/08/14

Toska

5
同じ獄を共にしたBC級戦犯の死刑囚や知遇を得た松井石根大将らに対する限りない愛惜の念を持ちながら、そこで日本無罪論に流れるのではなく、「我々はあの戦争で何をしたのか」を真正面から見据えようとする。凄まじい精神の力と誠実さ。そのため自らが犯した罪をも(それこそ「手負いの覚悟」で)克明に振り返っており、40年前にゲリラと戦った地を再訪する場面などは鬼気迫るものを感じた。これまでに読んだ戦争体験者の著作の中で、最も心に沁みるものの一つであったかもしれない。2022/06/06

富士さん

5
「純情」だから死刑を免れたのだろうと記録されている著者の人柄を強く感じる本でした。現実は複雑で、正しさなんてありません。そうなると、ともすれば安易に「みんな悪いんだから、いいじゃん」と開き直ることになります。それがオトナな対応というものであり、そうであり続けている。しかし、著者は「純情」にも、そこは断固拒否します。開き直りがまかり通ればやったもん勝ちの世界になってしまうのです。開き直りは東京裁判とその評価にも、個性的な南京大虐殺論で指摘されるように、日本軍にもあった。そこが本書のテーマなのだと思います。2021/04/26

yu01

2
著者は、大東亜共栄圏を本気で信じ揚々と南方戦線に赴いた青年将校。逃亡した現地人を射殺して戦犯として死刑囚に。仲間は、国のために死んだのではないと言い切る。無謀な作戦によって、ほとんどが戦闘ではなく飢えと疲労で風土病や餓死で「虫けらよりも惨めに」「国を恨み」死んでいった。その事実を中心に据え、著者は「戦死者のおかげで復興した」や「負けたから仕方ない」といった戦後の(短絡的な)思考を、戦争をぼかすものとして頑なに拒む。そして、日本が先送りにしてきた戦後保障や護憲の問題を指摘している。手負いの言葉の重み。2012/11/10

Hidekazu Asai

1
本書は南方戦線で痛ましい戦争体験に遭遇した大日本帝国軍を掘り起こすルポルタージュです。著者自身が、有期刑の戦犯であり、絞死刑とわけ隔てたものは何なのか。自己反省を伴いながら、中国大陸での大日本帝国軍の残虐性を指弾し、戦争の悲惨さを訴える「重厚な本」です。 本書を読むと、戦争がいかに狂気かわかります。 必読書です。 2019/05/26

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