内容説明
20世紀初頭、ロシアを震撼させた社会革命党(エス・エル)戦闘団の冷徹なテロ指揮者、詩人ロープシン、本名サヴィンコフの回想録。内務大臣プレーヴェ暗殺に成功した戦闘団は、セルゲイ大公の暗殺計画にとりかかる。そして…幾多の文学・思想書に正義の観念、愛と虚無、政治における目的と手段のテーマを提供した傑作ドキュメント。
目次
第1章 プレーヴェ暗殺(戦闘団への参加;プレーヴェ監視;アゼーフとの再会 ほか)
第2章 セルゲイ大公の暗殺(戦闘団規約の作成;新たな暗殺計画;セルゲイ大公監視はじまる ほか)
第3章 戦闘団(次の目標は?;神父ガポンと暗殺志願者たち;大量逮捕はじまる ほか)
著者等紹介
サヴィンコフ[サヴィンコフ][Савинков,Б.]
1879‐1925年。詩人・作家ロープシンの本名。エス・エル戦闘団を指揮して、モスクワ総督プレーヴェ、セルゲイ大公の暗殺に成功。1917年の革命の後、白軍の武装蜂起を指導し、逮捕され死去
川崎浹[カワサキトオル]
1959年早稲田大学大学院(露文学)修了。ロシア文学者。早稲田大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ぺんぎん
2
20世紀初頭、ちょうど日露戦争やらペテルブルク血の日曜日事件な時代。20~30代の熱い魂持った革命家達の実話。内ゲバや学生運動って国内で聞くと胡散臭い感じがして、自伝とかも暑苦しいイメージがあるけど、本書はスッキリ淡々、でもスリリング。原文か、はたまた訳文が素晴らしいのか電車でスラスラ読める。著者自身がテロリストなんだけど、仲間の心理描写が主で本人のキャラがいまいち分かんない。クール系かな?爆弾投擲、二重スパイ内偵、欧州跨いだ逃走劇、ゴールデンカムイよりも実写化向けかと。下巻の最終対決が楽しみ2022/05/12
うたまる
1
「おれはテロを信じている。おれにとって、革命のすべてはテロにあるんだ。今、おれたちは少数だが、見ていたまえ、やがて多数になる。明日には、おそらくおれはこの世にいないだろう。それでもおれは幸福だ」……ロシア革命前夜、社会革命党でテロ活動を担った戦闘団幹部の回顧録。テロ志願者たちはみな一様に革命の高揚感に浸っている。自分がやるのだ、自分が国を救うのだ、と。その危うさを十二分に承知しながら、それでもやっぱり彼らを批判したくない。それは我が国の国難時に自ら生命を賭して戦ってくれた先人に刃を向けるのと同じだから。2025/02/09
俊太郎
0
テロに対するある種高潔な思いはこの時代のロシアだから生まれ得たものなのか。今のテロリズムとは一線を画するロシア革命のテロリズムは興味深い。2017/10/28
椿
0
一級のドキュメントとしてよみました。 テロリストだけど彼らなりの痛切な正義感、使命感が痛いぐらいにつたわってきました。 2008/04/11
Caivs Marivs
0
今日、テロリズムを肯定することは難しい。しかし、それを肯定せねば、どうしようもない世界だとしたら? 本書は、どうしようもない世界を変えるために、自らの罪の意識と向き合い、倫理観をもって”テロ”に挑んだ人と、その仲間たちの記録である。まるで言い訳の様に何度も描写されるが、社会革命党戦闘団は、決して無差別テロを肯定せず、要人のみを狙い、そのために別派閥と対立しさえした。スピリドーノワが評した、エリート意識に凝り固まったお荷物というのは、この”高い倫理観”の副作用かもしれない。2022/04/01