内容説明
「ゆたかさ」の増大と普及は何をもたらしたか。現代資本主義の特質を明らかにした古典的名著の最終改訂版である本書では、インフレ論について第四版を大幅に修正した。他方では、今回もマネタリズムの金融政策、環境問題、軍事支出などを批判的に考察し、政治的保守主義台頭の必然性を解明している。二〇〇六年に九七歳で逝去した著者の代表作である。
目次
ゆたかな社会
通念というもの
経済学と絶望の伝統
不安な安心
アメリカの思潮
マルクス主義の暗影
不平等
経済的保障
生産の優位
消費需要の至上性
依存効果
生産における既得利益
集金人の到来
インフレーション
貨幣的幻想
生産と価格安定
社会的バランスの理論
投資のバランス
転換
生産と保障との分離
バランスの回復
貧困の地位
労働、余暇、新しい階級
安全保障と生存について
著者等紹介
ガルブレイス,J.K.[ガルブレイス,J.K.][Galbraith,John Kenneth]
1908‐2006年。経済学者。ハーバード大学名誉教授。カナダに生まれ、ハーバード大学等で教鞭をとった後にアメリカの政府機関『フォーチュン』編集部などに勤務した。49‐70年ハーバード大学教授。この間にケネディ政権下のインド大使も務めた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kaizen@名古屋de朝活読書会
61
1958年に初版が、1969年に第二版が出ている。 50年経過して、ガルブレイスの説が、現実のものになった。 不平等、貧困の新しい地位が、アメリカの深刻な現実になった。 ゆたかな社会の曲がり角が、2008年の特徴だろう。 ガルブレイスを呼んでいた人たちが、判断を誤ったのはなぜだろう。 理論を軽んじたのだろうか、歴史から学ばなかったのだろうか、 現実に押されてしまったのだろうか。2010/04/23
wiki
18
ゆたかさの主要な影響として、「われわれは、ゆたかさとともに、その便益および文化から排除された人びとを安易に無視して平気でいる」。更にその正当化として「政府の非能率を強調し、そのコストと税金(国防のためのものは別として)を自由に対する脅威と見なす」議論があり、貧困に置き去りにされた層に対し「社会進化論の際立った無慈悲さをもってのんびりしているわけではないにしても、事態を改善する措置で可能なものまたは社会的に賢明なものは存在しない、との信念をもって満足していられる」と痛烈に批判。彼の目は万民の幸福にあった。2020/04/04
キクノ
16
やっと読み終わりました。はたして今は、ゆたかな社会なのか。生産拡大(経済成長)に重きを置く経済学の通念。しかし、ゆたかな社会であるとすれば、生産拡大は目指すべき目標なのだろうか。通念を批判し、経済学を考え直す1冊。ガルブレイスは、教育(人的投資)に力を入れるべきとしていますが、なかなか曖昧さが残ります…2015/11/26
Francis
11
異端の経済学者ガルブレイス先生の主著。10年ぶりの再読。理論書と言うよりも長いエッセイの様な感じの本。大著なので最初の方の論旨をかなり忘れているが、後半で個人的な嗜好が色濃く反映するモノは私企業によって潤沢に供給されているのに、学校などの公共施設はゆたかな社会に見合うほど十分に供給されているとは言えない、と言う主張には頷けるものがあった。2016/10/07
ヴァン
9
ガルブレイスのこの本は、公共的な財貨よりも、私的な財貨の生産が重んじられる傾向、またそれにともなう欲望の創出と供給について、当時のアメリカ社会の現状を観察、(初版は1958年)分析し、変更を求めている。企業と組合が価格と賃金について合議し、統制することなど、資本主義内での変革提案は今日でも新しいだろう。2022/12/23