内容説明
一九三七年九月、日本人警官・芹沢一郎は、陸軍の情報将校・嘉山から、上海社会を仕切る青幇の巨魁、蕭炎彬との仲を取り持ってほしいという奇妙な依頼を受ける。それをきっかけに運命の歯車は徐々に狂い始める。戦時下の魔都上海を濃密に描き、人生の悲哀に迫って読む者を圧倒する一三〇〇枚。谷崎潤一郎賞、ドゥマゴ文学賞受賞作、待望の文庫化。第1部第十三章までを収録。
著者等紹介
松浦寿輝[マツウラヒサキ]
1954年東京生まれ。詩人、小説家、批評家、フランス文学者。東京大学名誉教授。1988年『冬の本』で高見順賞、95年『エッフェル塔試論』で吉田秀和賞、96年『折口信夫論』で三島由紀夫賞、同年『平面論―一八八〇年代西欧』で渋沢・クローデル賞平山郁夫特別賞、2000年『知の庭園』で芸術選奨文部大臣賞(評論等部門)、同年「花腐し」で芥川賞、05年『あやめ 鰈 ひかがみ』で木山捷平文学賞、同年『半島』で読売文学賞、09年『吃水都市』で萩原朔太郎賞、14年『afterward』で鮎川信夫賞、15年『明治の表象空間』で毎日芸術賞特別賞、17年本作で谷崎潤一郎賞およびドゥマゴ文学賞、19年『人外』で野間文芸賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キク
44
主人公である上海警察の芹沢が、情報将校・嘉山から裏社会の大物であるショウ・イーピンを紹介してほしいと頼まれてから、歯車が徐々に狂い始め戦時下の魔都上海の底辺に転げ落ちていく上巻。東大名誉教授でもある小説家の松浦が谷崎潤一郎賞とドゥマゴ文学賞をとった作品で、芹沢の転げ落ちぶりが本気でこわい。村上春樹がよく「どんな男も、真夜中の海に船からいきなり突き落とされる恐怖を常に抱えている」というけど、まさに真夜中の海に突き落とされてて、それが「自分にも起こりうることだ」という説得力がハンパない。下巻へ。2024/06/15
ケイトKATE
22
日中戦争が開戦した1937年、上海の租界地で警察官をしていた芹沢一郎は、陸軍情報将校の嘉山清から、上海の裏社会のボス簫炎彬との面会実現を依頼される。簫と直接的な接点がなかった芹沢は、行きつけの骨董屋の主人、馮篤生が簫の妻美雨の義理の伯父であるのを知り、簫と嘉山を会わせることに成功するが、これを機に、芹沢の人生は転落していく。語りと登場人物の言葉が一緒になった独特な文章であるが、秘密を抱えている登場人物たちと、日中戦争下の混沌と退廃的な上海の街に引き込まれていった。続きを読むのが楽しみである。2024/07/16
ポン
2
沢木耕太郎さんの解説は下巻でした2024/03/03
i-CHIHIRO
0
お気に入りレベル★★★★☆ 255文字では紹介しきれないので、こちらでこの本を紹介しています。https://ameblo.jp/angel-and-poison/entry-12888733010.html2024/12/18
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