出版社内容情報
怪しく美しい漱石の夢の世界を、名手近藤ようこが漫画化。描き下ろしの「第十一夜」を新たに収録。
内容説明
こんな夢を見た―。死んでしまった美しい女との百年後の邂逅、逃れられない前世の因縁、自殺を試みた瞬間に味わう激しい後悔、断崖絶壁で豚の大群に追い詰められる恐怖…。美しくて恐ろしい漱石の夢の世界を、名手近藤ようこが漫画に描く。新たに描き下ろした原作へのオマージュ「第十一夜」を収録。
著者等紹介
近藤ようこ[コンドウヨウコ]
1957年新潟市生まれ。漫画家。折口民俗学への関心から國學院大學に進学し、在学中に漫画家としてデビュー
夏目漱石[ナツメソウセキ]
1867‐1916年。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
112
罪を背負って心の淵を彷徨い生きる男の話。どんな罪を犯したのかはっきりとはわからないが、酷いことをしたには違いない。人間は小さな罪なら日常的に消し去る。しかし人間は小さな罪でも必ず心に引っかかり後悔がある。罪は犯した時点で逃れられないし、償っても元には戻せないのか。先に読んだ「さいはての家」の年齢が離れた若い女との不倫の逃避行からそろそろ元に戻ろうと思い始めたダメ男が読んでいた漱石作品です。偶然にも勿論知らずに一緒に購入したのは何かの暗示でしょうね。十篇の夢の話。私も見るのは怖い夢か意味不明な夢が多いです。2020/06/08
HANA
74
原作は言わずと知れた漱石。もう何度となく読み返した作品なので内容もほぼ覚えているのだが、それでも著者の独特の筆遣いで描かれるとまた違った読み心地があるなあ。原作のどことなく漱石の夢に迷い込んだようなふわふわした感じを残しながら、それでも近藤ようこの世界にそれをしっかりと取り込んでいるような。特に運慶と仁王の話や豚をステッキで叩く話等のどことなく惚けたような話や、子供を背負っている話の暗闇を手探りであるくような印象、女を百年待つ話など特にそれが顕著なような。漫画でしか表せない世界観を堪能できる一冊でした。2023/06/02
kaoru
60
漱石の『夢十夜』を近藤ようこが漫画化。幻想的かつ構成の堅牢な原作をどのように生かすかと思ったが、彼女の静寂な画風がよく馴染んでいる。哀しくも美しい『第一夜』、得体の知れない鬱屈と煩悶に満ちた『第二夜』、根源的な罪悪感を扱ったかに思える『第三夜』、留学時の不安を想起させる『第七夜』。あとがきで近藤氏は「漫画化するのは自分の欲望のためであり、読者にはまず原作の小説を読んで欲しい」と書いているが、小説を多く漫画化している彼女はやはり漱石の原作に惹きつけられたのだろう。登場する漱石らしき人物がおっとりした感じ⇒2021/04/11
Vakira
57
原作は漱石さんの「夢十夜」。元祖ショートショート。「こんな夢を見た」で始まる。スピルバーグ提供映画、黒澤明の「夢」の冒頭の言葉はここから来たのか。30年前の映画が蘇った。しかしストーリーは全然違った。黒澤明の映像は兎に角綺麗で感動した思い出。当時はビデオを買ってしまった程。漱石さんのは身近な夢。素敵な映像は浮かばなかった。しかし,近藤ようこさん、いい絵です。コマ割りといい、金之助さんの表情といい、当時の街の風景といい、これなら漱石の夢とマッチング。漱石さんには申し訳ないですが小説よりも漫画で琴線響きました2020/07/08
しゅてふぁん
47
色んなバージョンを見かけるたびに手に取ってしまう『夢十夜』。今回は漫画。絵で読むとイメージが固定されてしまうものだけど、この作品は全くそんなことはない。読み始めると夢の世界を彷徨っているような不思議な感覚になるのは文字で読むのと大差ない。あぁ、やっぱり好きだわ。2020/08/28