内容説明
多くの人に惜しまれつつ二〇一八年にこの世を去ったアニメーション監督・高畑勲。『太陽の王子ホルスの大冒険』から『かぐや姫の物語』にいたるまでの自らの仕事や、影響を受けた人々や作品、苦楽をともにした仲間たちについて縦横に語り、綴ったエッセイをまとめる。アニメーション界に偉大な足跡を残した高畑監督の人間像に幅広く迫る生前最後のエッセイ集、待望の文庫化。
目次
1 日本の文化とその風景
2 日本語を話すとき
3 子どもという存在
4 一緒にやってきた仲間たち
5 漫画映画のつくりかた
6 尊敬する、刺激しあう
7 こんな映画をつくってきた
8 伝えたい、このこと
9 監督、ある日の姿、ある日の考え
著者等紹介
高畑勲[タカハタイサオ]
1935‐2018年。アニメーション映画監督。東京大学仏文科卒。1968年『太陽の王子ホルスの大冒険』を初監督。1985年宮崎駿らとスタジオジブリ設立(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
jamko
17
高畑勲展を見た後に買ったもう一冊がこちら。本書のかぐや姫考がすごい。企画展で見た資料からもよくわかるが、企画段階で徹底的に登場人物たちの行動の動機を詰める。詰めまくる。本書を読めば「かぐや姫の物語」が決して突飛な解釈でなかったことがよくわかる。また、〈思い入れ〉型の感情移入と〈思いやり〉型の感情移入の違いと、〈思い入れ〉型ばかりの日本アニメに警鐘を鳴らしてるのが興味深かった。〈思い入れ〉型は主人公と観客の同化。主観的に感情を揺すぶられる。客観的視点や想像力の余地がない。→2019/09/25
DEN2RO
2
昨年亡くなった著者の生前最後のエッセイ集の文庫化です。「思い入れ」によるドキドキではなく、「思いやり」によるハラハラを映画にしたいとの考えが印象的でした。主人公に入れ込む主観的なアニメ映画ではなく、客観的に見ながらも主人公を思いやる作品を目指したようです。2019/09/21
skr-shower
2
アニメが日本の売り込みコンテンツとなる前から、熱を持って調べこみ作っていたのだとのしかかられる想いがある。「かぐや姫」は不思議に思っていた事が企画に盛り込まれていてフムフムという感じ。戦争・9条に関しては、少しの違和感有り。2019/08/18
かおり
1
高畑監督のエッセイ集。アニメーション映画を作る側から、今の映画をどうとらえているかが読めて面白い。ドキドキとハラハラは違うとか。読書感想文の書き方が、自分の心がどう動いたかを書くのか、物語をどうとらえているのかを、書くのかのちがいとか。背景ばかりが“クソリアル”になったのはどうしてなのか、とか。一番興味を惹かれたのは、竹取物語やかぐや姫の物語に言及していたところ。2019/09/04
二浪人ファーストアウト
0
「思い入れ」と「思いやり」の違いにはハッとさせられました。カート・ヴォネガットの言っていた「愛は負けても親切は勝つ」につながっているな、とも。特に今のネット社会では「思い入れ」の方が過剰になっていると感じるので。2023/08/24