出版社内容情報
世の無常を考察した中世の随筆文学の代表作。日本人の情感を見事に描く。佐藤春夫の訳で味わう。長明に関する小説、評論三篇を併せて収載。
内容説明
『方丈記』は、時代、政治の移り変わり、天変地異により翻弄され続ける、この世での人の命と栖のはかなさを、深い無常観を踏まえた上で隠者鴨長明が和漢混淆の雄勁な日本語で描いた中世随筆文学の代表作。日本人の精神性そのものを、緊張感溢れる、しかも流れる如き名文で表現している。文豪佐藤春夫の名訳で味わう。西行、長明、兼好の隠者の系譜を論じた小説、評論三篇を併せて収載した。
著者等紹介
佐藤春夫[サトウハルオ]
1892‐1964年。詩人・作家。和歌山県東牟婁郡新宮町(現・新宮市)生まれ。1910年、慶應義塾大学予科文学部入学、のちに中退。雑誌「三田文学」「スバル」などに詩歌を発表、その著作は、詩歌、小説、戯曲、評伝、随筆、評論、童話など多岐にわたる。日本古典への造詣も特に深く、多くの随想、古典入門を残している(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
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こーた
107
戦前昭和の文豪佐藤春夫とめぐる「方丈記」世界とその周辺。流れるような訳文は、鴨長明自身の語りが現代に乗りうつったかのようで、美しい。鎌倉下向の密命を伝える旧友雅経の訪問を描いた小説「鴨長明」は、「方丈記」執筆に至る経緯をミステリ調で語って、読ませる。兼好や西行との対比をつづった他二編のエッセイでは、心理派と自然派、音楽愛好と絵画愛好などといった文学論が、さすがの鋭さで展開され、興味深い。稀代の藝術家が織りなす「方丈記」世界に、どっぷりと浸れる一冊。2017/10/28
buchipanda3
103
現代語訳の三冊目として。こちらは他(ちくま、光文社)と違って、適宜意訳している。原文の端的でリズミカルな面は失われた感があるが、悠然とした文でかつ訳注不要で理解し易かった。合わせて鎌倉へ旅する前後を描いた小説、兼好法師や西行と対比した作家論を収録。中でも同じ随筆家の兼好との比較は興味深かった。著者曰く、兼好は情懐を抱く現実家で自由主義を奉ずる心理派、長明は秋霜の気を帯びた理想家で人本主義の行動派。また小説では雅経が弱さと剛気さを合わせ持つと称する。一見、矛盾のようだがそこにこそ長明の人間味があると感じた。2024/01/08
スプーン
51
出家僧の告白文。李白などの漢詩の心境に似た部分があり、800年前から人生の真理は同じなのだなぁと思ふ。詩人佐藤春夫氏の現代語訳が美しい。2025/03/16
KEI
31
隠遁者の随筆名作現代語訳と評論数編。隠遁者の作品が残ることが奇跡な気がする。2025/04/30
スプーン
29
鴨長明の悟りの境地を記した一冊。 全世界に共通の部分を書いています。 日本三大随筆の一つ。2017/04/16