岩波現代文庫
猪飼野詩集

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  • サイズ 文庫判/ページ数 234p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006022327
  • NDC分類 911.56
  • Cコード C0192

内容説明

大阪市生野区猪飼野―一九七三年二月一日を期して、その町名が消えた朝鮮人密集地である。朝鮮人の原初の姿が風化されずに残る地域として知られる。猪飼野で暮らした記憶をたどりながら、その集落での生活を語る連作詩集。「詩こそ人間を描くものだ」という作者の思いが見事に表現された代表作。書下ろしの自著解題を収録。

目次

見えない町
うたひとつ
うたふたつ
うたまたひとつ
寒ぼら
日日の深みで
朝鮮辛報―この届くことのない対話
朝鮮瓦報―この置き去られる遺産
イカイノトケビ
果てる在日〔ほか〕

著者等紹介

金時鐘[キムシジョン]
1929年、朝鮮元山生まれ。詩人。1948年の済州島四・三事件を経て来日。1953年に詩誌『ヂンダレ』を創刊。日本語による詩作を中心に、批評などの執筆と講演活動を続ける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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Shoji

48
詩集ではある。間違いない。しかし、その詩の内容がヘビー。特に、「果てる在日」、「いぶる」に関しては二度読み、三度読みした。歴史時代にヤマトを蘇我氏が席巻していた時代に、渡来人がこの地に住み着いた。渡来人は猪を飼育する技術を持っていた。猪飼野の走りらしい。戦後、済州島から多くの人がやってきてコリアンタウンを築いた。この地は被差別側に廻った。被差別解消が目的かは分からないが、「猪飼野」は行政上の地名から消えた。釜ヶ崎もそう。この詩集、生きるための魂の叫びを聞いたような気がした。2018/08/05

∃.狂茶党

15
在日の朝鮮人の、暮らしの言葉。 作者は戦後、済州島事件の後に、日本流れ着いた。 占領下の朝鮮では日本語教育を受けていたであろうが、二重の言語を生きる人である。 言葉は二重だが、国となるとさらに複雑だ、一つの祖国からは遠くにある。朝鮮は二つ、あるいは在日社会も含めて三つであるし、日本は祖国とは呼び難いであろうが、生活基盤のある国である。 詩人は言葉で、在日を捉えようとする、あるいは伝えようとする。 言葉は世界とつながる道具であり、世界を作るものである。 2023/08/10

松本直哉

13
読みながら思い出したのは近鉄鶴橋駅でよく見かけた担ぎ屋のおばさんの姿。自らの体の何倍もの大きさの荷物を背負う小柄な女性のしわの深く刻まれた顔。この詩集にも「骨盤がめりこむほどの五斗の米」を背負う女性が出てくる。その強さを歌う詩人の言葉も、強い。「打ってやる」の執拗なリフレインに典型的に見られる、重い弾丸のような強い言葉。支配者によって使うことを強いられた言語で、切り詰めるように、しぼり出すように歌いだすとき、どの国にも属すことを許されない異邦人の、不条理への強い反抗の意思が、読むものの胸を刺す。2015/05/21

かふ

5
金時鐘の在日という立場、それも南北に引き裂かれた朝鮮という片割れ、さらに「イカイノ」という今は消えてしまったが消されはしない場所というテーマ性がストレートに届いてくる。かつてそこで生きるために「打ってやる 打ってやる」と働いていた者たちの猪飼野が異界野へ。2015/03/01

呉下の阿蒙

1
日々の深みで(1) / 日々の深みで(2) / 果てる在日4/ へだてる風景2023/09/20

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