内容説明
本書は日本の近代美術を幕末・明治の揺籃期を中心に、その後の展開を論じた文章で構成。美術作品はもとより、美術家たちの活動をも変転いちじるしい時代や社会の動向に照らして描いている。洋の東西にわたる広い視野のなかに浮かんでくる日本美術の「近代」といえるが、西洋文化=美術と邂逅した美術家の挑戦と挫折であり、さらには胎動とその準備を語ることを通じて、日本美術の「近代」が、いかなる過程を経て確立されていったのかを生き生きと描出。歴史と芸術の相克を探った独特の美術エッセー(覚書)である。岩波現代文庫オリジナル版。
目次
1 先駆者の視界(西から東へ、あるいは東のなかの西;未知の地平―司馬江漢 ほか)
2 明治美術の一隅(福澤諭吉ノート;川上冬崖の死 ほか)
3 外国人の眼(歴史の風景;知られざる画家セオドア・ウオレス ほか)
4 時代の明暗(横浜絵、あるいは港町慕情;写真術の招来 ほか)
著者等紹介
酒井忠康[サカイタダヤス]
1941年、北海道生まれ。慶應義塾大学文学部卒。1964年、神奈川県立近代美術館に勤務。同館館長を経て、現在、世田谷美術館館長。『海の鎖 描かれた維新』『開化の浮世絵師清親』などで注目され(第一回サントリー学芸賞)、その後、現代美術の評論でも活躍(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きさらぎ
4
美術館館長の随筆集。表題は「幕末・明治」だが、司馬江漢や松平定信、周辺として平賀源内などの江戸中~後期の記述も結構多い。取り上げられているのは高橋由一、ワーグマン、ウオレス、ビゴー、横浜絵に中村不折、岩村透といった面々で、私などは全く知らないか、せいぜい名前を聞いたことはあるが具体的な作品は頭に浮かびませんという顔ぶれ。岡倉天心やフェノロサも登場するがどちらかというと脇役。私は歴史読み物として楽しんだが、美術方面に詳しい人にはまた別の読み方があるだろう。時代・人物、色んな方面から入っていける本だと思う。2016/09/28
街場マチ子
0
世田谷美術館館長の美術エッセー集。ちょうど大学のレポートで司馬江漢について調べようと思っていたところ、幕末・明治の絵師・画家がひととおり押さえてあるので丁度いいと思って買ったのだけど・・・まだ私には早かった(泣)パラパラと読んだだけで本棚にしまいました。この時期の美術史を、ざっとではなく、よくよく理解している上級者向けです。時代と美術の関係性のダイナミズムがしっかり書き込まれているので、基礎知識がある方にとってはとても面白いのだと思います。また再挑戦します。2013/08/06
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