岩波現代文庫
牛 築路

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  • サイズ 文庫判/ページ数 350p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006021832
  • NDC分類 923.7
  • Cコード C0197

出版社内容情報

中国の寒村での庶民の生と死を凝視し,暴力という秘儀体験と生命のはかなさを饒舌な文体で濃密に描く。荒涼たる大地ではいつくばうように生きる人々が見た幻,そして望み.輪廻転生.渇望と諦念。「マジックリアリズム」の手法で知られ,国際的にも注目される現代中国文学の旗手が文革期農村を丹念に描いた秀作二篇。本邦初訳。岩波現代文庫オリジナル版。(解説=飯塚容)

内容説明

中国の寒村での庶民の生と死を凝視し、暴力という秘儀体験と生命のはかなさを饒舌な文体で濃密に描く。荒涼たる大地ではいつくばうように生きる人々。自らが何者かを知らず、自らの居場所を知らず、自らの行く手を知らない人々にとっての幻と希望とは何か。現代中国文学の旗手が文革期農村を描いた小説二篇は、「マジックリアリズム」と呼ばれる著者の作品世界を知る上で恰好な作品である。本邦初訳。

著者等紹介

莫言[バクゲン]
1955年、中国山東省生まれ。貧困と飢餓の中で幼年時代を過ごし、小学五年で農民になる。76年人民解放軍に入隊し、後に執筆活動を開始。87年に発表した『赤い高梁』(岩波現代文庫)は内外の文壇で高く評価された。現代中国を代表する作家として執筆活動を続ける

菱沼彬晁[ヒシヌマヨシアキ]
1943年生まれ。翻訳家。日本ペンクラブ理事(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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りー

26
「本作はマジックリアリズムと呼ばれる著者の作品世界を知る上で恰好な作品である」作品解説より。いやいや全然マジックリアリズムじゃないじゃないですか。確かに文革期の中国の生活には触れられたけれども、特に『牛』の方なんてどこがマジックだったのか。まあそれはそれとして作品自体は訳もよいのか読み易く、内容もしっかり手応えのあるものではあったが、一番の見所は本書の政治的な配慮と風刺の絶妙なバランス感覚と、それを飄々と描き出す著者の筆力である。断じてマジックリアリズムが見所ではない。それはもう口を酸っぱく言っておく。2015/07/30

touch.0324

23
『牛』と『築路』の二篇。風景描写は相変わらず巧みである。そこへ暴力、性欲、痛み、血とうまそうなメシの匂いを加えれば、中国の荒涼としたアルカリ質の大地に生きる農民達のリアルが浮かび上がる。誰でもない、何処へ向かうでもない彼らの目で見た、現代の中国や共産党指導部のはらむ矛盾を鮮やかに描きだしている。テーマは明快過ぎるほど明快。ザ・莫言文学。2014/08/22

白義

20
最初の読みはじめはうひゃあ、これはキンタマが縮む!と思った。だって牛のタマタマだよ。でっかいよ。それをあんなにリアルな描写でちょん切られたら…しかし読み終わるとギンギンのハイになりそうになっていた。生への意志を剥き出しにした虚飾なき人間の姿に濃厚な性と暴力の気配、重層的でショッキングな時間の扱い方に魅了される。牛はオチの妙な不気味さまでどこか滑稽味のある青春童児小説。築路は文化大革命期の道路工事現場で展開される残らぬ神話。マジック成分は少ないがその分要所要所でかなり濃く、凄まじい一冊だった2012/10/27

ハチアカデミー

20
B 貧農を舞台に牛を巡る騒動の顛末を描いた「牛」、同じ舞台で、歴史に翻弄される愛憎劇を描く「築路」。ともにリアリズム寄りの作品。とはいえ、莫言のリアリズムとは「牛のタマタマ」の料理法であり、豆腐とニラの売り子への性の願望であり、壮絶な言葉の応酬である。あとは金持ちへの僻みとか。「やさしさ」なんて感情が、独りよがりでグロテスクなものであることを描きつつも、それでも人間を賛歌する点が素晴らしい。だれも良い人ではないし、正しい人でもない。村も国もおかしな所だらけ。それでも必死で生きる様をユーモラスに描けている。2012/10/12

三柴ゆよし

17
「牛」。去勢される牛をひとつの隠喩として、中国共産党体制の非人道を批判する。と同時に、全篇にわたり通底するのは生臭いまでに剥き身の生命讃歌であり、その力強さは思わず息を呑むほどに美しく、残酷だ。ただ個人的には、牛の金玉からはじまる青春小説として楽しく読んだ。「築路」。工事人夫たちの過去と現在が交錯する、こちらはかなりマジックリアリズムめいた作品。小説としては「牛」のほうが好きだが、犬釣りや墓荒らし、豆腐売りの女との攻防など、それぞれの挿話が鮮烈な印象を残す。いずれもまさしく「にほひたつ」がごとき傑作。2011/04/10

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