内容説明
万葉・古今から芭蕉・蕪村・晶子まで、季節のうつろいに響きあい、忘れえぬ時を呼びおこす日本の歌蔵。本書は古今の詩歌を味わい、その詞華に誘われて、さりげなく清冽な一文で生の鼓動と魂のありかを伝える。「うた」の調べに添い、ひめやかに生き続けるよろこびと安堵を味わえるひと時。時を超えて共感し、作者との共存を自覚する手がかり。選び抜かれた言葉が心の奥底の扉を開きはじめる。
目次
涼しさを
秋は来にけり
山路の栗
紅葉につけても
木の葉しぐれ
畑打つ人
春のうつつ
あるじなき梅
桜、山を動かす
ほととぎすの宿〔ほか〕
著者等紹介
竹西寛子[タケニシヒロコ]
1929年広島市生まれ。早稲田大学文学部卒業。1981年、短篇小説『兵隊宿』により川端康成文学賞を、長篇評論『山川登美子―「明星」の歌人』により毎日芸術賞(1986年)を、また1994年には日本芸術院賞を受賞するなど、作家、評論家として確乎たる地位を築く。その他に『管絃祭』(女流文学賞)『式子内親王・永福門院』(平林たい子文学賞)『往還の記―日本の古典に思う』(田村俊子賞)『贈答のうた』(野間文芸賞)など著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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双海(ふたみ)
28
早くに母を失い、家族団欒を知らずに郷里を出た小林一茶。そして、五十を過ぎてようやく妻を娶り、子女に恵まれる。一茶は妻子をどんなに愛しく思っていたことか。しかし、子供達は嬰児のうちに相次いで亡くなり、妻にも先立たれてしまう。「撫子の なぜ折れたぞよ をれたぞよ」という、次々に夭折したわが子への悼句が胸に痛い。古句にかなしみがにじんでいる。2016/10/19
もりもりお
3
古典の素晴らしさ、日本語の美しさを教えてくれる硬派で温かい素敵な随筆です。2013/01/19
近町
1
古典の和歌や俳句、詩などを織り交ぜた随筆。その場にいないのに遠い日の景色に遭遇するようで胸がいっぱいになります。端的できれいな文章 胸を打つものがたくさん2016/07/20