出版社内容情報
「やがて私の時代が来る」と自己の前衛性を確信していたグスタフ・マーラー。著者はマーラーの作品の背後に非西欧世界にも及ぶ広大な音楽文化圏の存在を見いだし、現代音楽への道を切り開いていった彼の歩みを跡づける。
内容説明
「やがて私の時代が来る」と自己の前衛性を確信していたグスタフ・マーラー。彼の交響曲は自由で柔軟、感傷的で情感的、また急激な大爆発を起こすなど、近代人の知性と矛盾をさらけ出している。著者はマーラーの作品の背後に非西欧世界にも及ぶ広大な音楽文化圏の存在を見いだし、現代音楽への道を切り開いていった彼の歩みを跡づける。岩波新書版を増補。
目次
第1部 グスタフ・マーラー―現代音楽への道(われわれとマーラー;ボヘミアからヴィーンへ;新しい世界への出発;成就と崩壊の始まり;背後の世界の作品;開かれた終末)
第2部 マーラー小論(交響曲第一番二長調“巨人”;交響曲第五番嬰ハ短調;マーラー・ブームが意味するもの―クラシックの現在)
著者等紹介
柴田南雄[シバタミナオ]
1916‐96年。作曲家・音楽学者。東京生まれ。1939年東京大学理学部卒業。43年同文学部卒業。東京芸術大学、放送大学などで教鞭をとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のっち♬
116
作品の背後に非西欧世界に及ぶ広大な音楽文化圏の存在を見い出し、現代音楽を切り開いた軌跡を辿る。交響曲の交響詩的コンセプトやソナタ形式の枠組を拡張・超克せんとする前衛性を示す反面、先例を臆せず踏襲するのもマーラーの大胆さ。3番をはじめとする広汎な借用・引用や、次第に顕になるジェーンベルクとの近親性や表現主義指向の考察は根拠に乏しくとも未だ面白味がある。第1番を「花の章」付きで演奏すべきという配列に捉われ過ぎな見解や、4・7番の扱いの軽率さが鼻につく。アンチカラヤンに顕現した戦後の業界分析の偏向は80年代的。2023/07/23
syaori
65
先日6番を聞いていたとき突然、実は割りにマーラーが好きなのかもと思ったので手にとってみました。最初に世界や日本での受容に絡めてマーラーの今日性やその意味などに触れ、その後マーラーの生涯を追う形で主に彼の10曲の交響曲について解説してゆく構成。マーラーの音楽観や各交響曲の聴き所、交響曲間の繋がり、シュトラウスやシェーンベルク、ショスタコーヴィチなど同時代や後代の作曲家への影響を著者の鑑賞体験なども交えながら語ってくれるので、マーラーに親しみながら作品の構造、背景、曲想について知れて、とても有難い本でした。2021/11/10
テイネハイランド
16
図書館本。先日読んだマンの小説「ヴェニスに死す」の映画版(ヴィスコンティ監督作)で流れていたのが、マーラーの交響曲第五番第四楽章。クラシック音楽の中でも最も人気の高い作曲家マーラーについての知識を深めたいと思い、手に取った一冊。前に読んだ「ショパンコンクール」についてもいえることですが、この本もやはり音楽についての予備知識がないと読みこなすのは難しいように思います。理解できない箇所も多くあるなか、第九交響曲について解説した箇所など、衒学的ともいえる論調で説明する著者の文章には魅力も感じられました。2017/04/06
montetsutsu
2
マーラーの生涯と作品をコンパクトにまとめている良書。著者のマーラー愛が伝わってくる。7番の評価が低いのは仕方ないのかな。戦前、東京音楽学校の雇われ外国人教師、プリングスハイムがマーラーの交響曲を次々と日本初演手掛けたそうで。プリングスハイムはウィーン国立歌劇場でマーラーの元で副指揮者だったとか。マーラーから直接薫陶を受けた音楽家が日本のマーラー演奏史の先駆けとなったとは知らなかった。2020/04/04
gkmond
2
「アルマの場合は逆に、その環境からもジェネレーションからも、むしろマーラーよりもナウい音楽感覚の持ち主だった。」まさか、こんな本にナウいが出てくるとは!2011/05/13