岩波現代文庫
荷風と東京〈下〉―『断腸亭日乗』私註

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  • サイズ 文庫判/ページ数 400p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006021542
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0195

内容説明

『断腸亭日乗』によりながら、著者自ら荷風が歩いた東京を時間旅行し、失われた風景を幻影を見るように見る。下巻では銀座での交遊、写真や映画との関わり、玉の井の探索と傑作『〓(ぼく)東綺譚』の執筆の経緯、戦時下の浅草の哀愁が描かれ、東京大空襲による偏奇館焼亡、市川・八幡での終焉に至る。田園のなかに古き東京を見た荷風の幸福とはどのようなものであったか。

目次

探墓の興―墓地を歩く
車が走るモダン都市
「つゆのあとさき」のころ
「銀座食堂に〓(はん)す」―東京の復興は飲食物より
銀座の小さな喫茶店で
「見る人」の写真道楽
「活動写真」との関わり
私娼というひかげの花
ある夜の女
〓(ぼく)東の隠れ里―玉の井
陋巷での安らぎ
「〓(ぼく)東綺譚」と「寺島町奇譚」
玉の井から浅草へ
浅草の「一味の哀愁」
日中戦争下の日々
「門松も世をはばかりし小枝かな」―戦時下の物資窮乏
「家も蔵書もなき身」―偏奇館焼亡以後
田園に死す

著者等紹介

川本三郎[カワモトサブロウ]
1944年東京に生まれる。68年東京大学法学部卒業。評論家。91年『大正幻影』でサントリー学芸賞、97年本書『荷風と東京』で読売文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

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きさらぎ

5
自分の美意識と倫理観にとことん忠実に、滅びゆく江戸時代流の文人として生き、愉しむことを「自分に課しながら」生きた荷風。ダンディズムとはやせ我慢である、という言葉を思い出した。私娼を愛し「私は女好きだが処女を犯したことはない」と胸を張る。空襲で家を焼かれた流浪の日々、鄙の風景にマラルメや夢二を重ねる文人趣味。江戸とフランス文化からなる荷風の教養の厚みが、愚痴や弱音にさえ文体を与え、作品に昇華させる。その精神の力、そのストイシズムとダンディズムが、荷風の魂を荒廃への墜落から踏み留まらせた。そんな印象を受けた。2016/12/15

まさにい

3
奇偏館があった六本木一丁目、今はもうすごい所だけれど、その当時は、武蔵野の雰囲気を残していた場所であった。東京は、絶えず普請中であり、あっという間に昔の面影を失う。郷愁の念は短い間隔で襲ってくる。かつて感じた風景を、まだ普請されていない場所まで言って感じ取るのは自然のことなのかもしれない。2017/10/31

インテリ金ちゃん

1
 浅草から銀座への繁華街の推移、写真機や活動写真との関わりが興味深かった。戦時中・戦後の暮らしが荷風らしく、晩年の市川での暮らしが幸福であったと思いたい。2024/12/20

やまべ

0
どちらかと言えば地味で低刺激性の文章だと思うのだが、世の中に「川本三郎ファン」というのが確固として存在するのが分る気がした。確か「禁止事項を作る」と題するエッセイだったか、「好きなものについてしか書かない」という態度を表明していたが、永井荷風に対する限りない愛着がしみじみと感じられる著作。2011/11/08

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