内容説明
岩波ホール総支配人・高野悦子氏が、満鉄に勤務した父の死後、父が鉄道を敷設してまわった旧満州の地を旅した印象を書きとめた紀行文。大連、大石橋、瀋陽、吉林、哈爾濱、そして国境の町・黒河…。訪れた各地での人々との触れあい、少女時代を過ごした思い出、父から語られた話などが織りこまれ、味わい深い文章で綴られた詩情あふれる紀行エッセイ。
目次
于先生の手紙
東京―旅立ちまで
大連―砂浜に書く父の名
大石橋―幻の生家はどこに
瀋陽―北の都に誉れあれ
撫順―黒ダイヤの露天堀り
吉林―瀋海線に雉を撃つ
哈爾濱―満月に流れる松花江
黒河―凍土を踏んで国境へ
斉斉哈爾―丹頂鶴が地平線を飛ぶ
錦州―白コーリャンと古塔の町
東京―朝夕に禍福あり
ひとはみな兄弟となる
著者等紹介
高野悦子[タカノエツコ]
1929年、旧満州大石橋生まれ。51年、日本女子大学卒業。61年、パリ高等映画学院(IDHEC)監督科卒業。68年、岩波ホール創立と同時に総支配人に就任。1997年から2007年まで東京国立近代美術館フィルムセンターの初代名誉館長。世界各地の埋もれた名画の上映に力を注ぎブルーリボン賞、菊池寛賞を受賞。2004年文化功労者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夏子
4
戦前、満州鉄道に勤務していた父を持ち、自身も中国で子供時代を過ごした著者が父の死後再び中国を訪れた紀行文。今まで歴史の授業でしか知る事の無かった満州鉄道、そしてそれに関わった激動の時代を生きた日本と中国の人々の物語でした。2017/06/08
Lilas
1
満洲国演義(船戸与一)からの満州熱続きで選んだ本。満州国および満鉄の歴史的な話と紀行の面、両面から面白かった。また戦前の進歩的な家庭のあり様についてもよく分かる。現代よりよほどリベラルなのでは。著者の姉2人は少ししか出てこないけど、個性的な感じがして興味をひかれた。 それにしても、あじあ号に乗って、満州を旅してみたいなー。2020/09/17