内容説明
ソ連戦車隊が国境線を超えた。迎え撃つ日本軍部隊は壊滅。梶は辛うじて戦場を離脱、満洲の曠野を美千子をめざして逃避行を続ける。捕虜になるが脱走、彷徨する梶の上に雪は無心に舞い降りる。美千子よ、あとのなん百キロかを守ってくれ、祈ってくれ…非人間的世界を人間的に生きようと苦悩し、闘った男と女の波乱万丈の物語、三千枚ここに完結。
著者等紹介
五味川純平[ゴミカワジュンペイ]
1916‐95年。作家。中国大連に近い寒村に育つ。33年大連一中卒業。満鉄奨学資金給付生となり、東京商科大学予科に入学するも、中退。東京外語学校英語部文科卒業。旧満州の昭和製鋼所入社。43年召集され、ソ満国境を転戦、捕虜となる。48年帰国
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ehirano1
81
圧巻の最終巻!開幕からエンジン全開で臨場感がハンパありません。そして、そこから壮大な主人公自身の戦争が始まります。敵を内外双方に抱えながらの逃避行が壮絶で読んでいて辛いのですが、主人公の行く末を見るまではと読むのが止まりません。色々詰まった昭和の大傑作、畏るべし!2020/11/01
おたま
32
ソ満国境で始まった激烈な戦闘。ソ連軍の圧倒的な物量の前に梶たちの隊はなすすべもない。160名近くいた所属部隊の兵士たちのほとんどが戦死した中、梶は生き残った4名で戦線離脱する。そして果てしのない満洲の密林や原野の彷徨が始まる。ひたすら妻美千子の待つ場所を目指して。しかし、その間にも歴史は進み、日本は国家としては敗戦を迎えてしまう。梶たちはそれでも、さらに歩き続け、満州に取り残された民間人や敗残兵とめぐりあい、また満州人に復讐的に扱われたり、ソ連軍の捕虜となったりする。果たして、梶は美千子の元に戻れるのか。2021/03/14
Satoshi
15
(5部、6部)ついにソ連参戦となり、梶は民間人と国境地帯をさ迷う。飢餓の中で困難を克服しながらも赤軍の捕虜となる。そこでも理不尽ないじめがあり、戦友が病死する。戦友の死により、生きて美千子に会うという目的に反して班長を殴り、脱走する。何のための戦争だったのか、人道的な人物が前半では捕虜虐待に間接的に加担し、徴兵されたら弱い兵士を見捨てざる得ない状況になり、敗走の中で捕虜になることを選ぶが収容所で戦友が死に、脱走の末で客死する。人間の条件を見失わすまでの状況に追い込む戦争の理不尽。2023/06/01
檜村
11
暫く積読したままだったが少しずつ読んでいきました。戦争というものが如何に人間を歪ませるものかと勉強になった。本書は自身の体験をもとに執筆されたらしく、こういう貴重な本は後世に残すべきなのではないでしょうか。戦争が国力を増強させるという考えを持つ政治家がいたとしたら、一緒に参戦するべき!安全なところで指示を出すから安易な考えになる。そして本書を読むべし!2018/04/09
963papa 改め 大丈夫
10
見城徹の著書にて紹介されていた。壮絶な物語だった。主人公の人間性には、大いに共感することろはあった。だが、戦争という盲目的、狂信的な特殊環境下で、それを完遂することは、現代のような軟弱な時勢に流されている者にとって、超人のなせる業に見える。【戦時下の満州。日本企業に勤める梶。結婚し、田舎の炭鉱で中国人の労務管理に当たることになる。他の日本人たちの、中国人の人権を無視した扱い方に異を唱えるも、物も情報も制限された状況では、梶の主張する正論は響かない。その後、徴兵に掛かり、ソ連との戦闘に当たる。】2025/04/06