出版社内容情報
1946年に発表されて以来,演技と演出の最も実用的な古典とされてきた伝説の巨匠伊丹万作の84の断章.古今の映画作品をもとに読み解き,人間行動が本来的にもつ演技性と演出の問題をコミュニケーション理論として考察する.
内容説明
演技と演出に関する総合的な研究は少ない。伝説の巨匠伊丹万作の「演技指導論草案」は、一九四六年に発表されて以来、その分野の最も実用的な古典として愛読されてきた。この八四の断章からなるエッセイを古今の映画の具体例をもとに考察し、人間行動の本来的な演技性と演出の問題をコミュニケーション理論として読み解く。
目次
演出というコミュニケーション
伊丹万作という演出家
「演技指導論草案」の成り立ち
演技指導者の成立
やってみせる指導
暗示と批評
俳優をしかってはいけない
愛嬌について
視線について
芸の可撓性について
偶然性について
素人俳優の場合
セリフの改変について
無理な場合
信頼について
著者等紹介
佐藤忠男[サトウタダオ]
1930年新潟県に生まれる。国鉄職員、電電公社員、『映画評論』『思想の科学』編集長を経て、映画評論家となる。以後、文化、教育全般にわたる幅広い評論活動を展開。映画評論家、日本映画学校校長
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感想・レビュー
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水無月十六(ニール・フィレル)
4
映画監督伊丹万作の著作、「演技指導論草案」を援用しながら当時の日本映画界のエピソードを交えてその内容を掘り下げていく本。基本的に映画界の演出家としての心構えなどの話だが、「演出」というものは何も映画、演劇に限った話ではない。役者を社員、監督を上司に置き換えて考えることもできるだろう。新劇、歌舞伎などから派生してきたばかりの日本映画界のエピソードは映画好きとしては興味深く、またアルバイトなどの仕事の上でも役立ちそうな話が多くあって面白かった。信頼と可橈性を持って仕事をしていきたいと思えた。2016/08/09
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1
戦前戦中の映画は大衆の娯楽にようやく参入したばかりだったので、舞台のスターが監督と対等かそれ以上の態度で作品の注文をつけた時代の話など興味深かった。又伊丹氏の演技指導論文は技術的なことより、演出側から俳優に対してのコミュニケーションの内容が主であることを思えば、人間に対する深い思索と優しいまなざしを日々の映画撮影の仕事に注いでいたんだと心温まる。俳優の人権尊重は大切だけど、作品のために冷酷非情になって俳優スタッフを酷使する監督もいて、佐藤氏の述懐によって明らかにされたエピソードなど凄まじい内容もあった。2017/07/31
ネスミス
0
何て分かりやすく演出について解説しているだろうか。授業で勧められて読んだが、何度も感嘆の声を洩らした。良い本だ。 伊丹万作の演技指導論草案という論文を元に解説しているが、伊丹万作がやってはいけないと言っていたことをやってしまっていた自分が恥ずかしい。演出とはこういうものであるのか。なるほど、とても参考になった。2018/10/08
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