出版社内容情報
近代文学の最高峰は誰か,「小説の神様」とは語呂合わせなのか,様々な問題をエピソードをまじえながら縦横に論じた文学史.(3)のテーマは漱石・志賀・大衆文学・明治から大正へ.関川夏央解説
内容説明
明治から大正への過渡期、数々の成熟した作品が生まれた。時代と文明を批判した漱石は文学の一大山脈を築き、志賀ら若い個性は『白樺』を世に送り出した。「小説神髄」を起点とする小説形式の完成期を時代背景の分析とともに語り合う。本巻は「夏目漱石」「明治の大衆文学」「明治から大正へ」「志賀直哉」。
目次
夏目漱石(当時における漱石作品のうけとられかた;漱石と子規 ほか)
明治の大衆文学(純文学・文壇文学と大衆文学;大衆文学発生の問題をめぐって ほか)
明治から大正へ(乃木殉死をめぐって;日本文化における大正の意味 ほか)
志賀直哉(「父と子」の問題;「小説の神様」になったのはいつからか ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
i-miya
22
柳田泉・勝本清一郎・猪野謙二。◎ 夏目漱石。 (ゲスト)荒正人。P005 ○ 当時の漱石作品の受け取られ方。 M38『吾輩は猫である』。片山天弦(てんげん)は『猫』の越智東風のモデル。髪をてらてらにわけ、袴で几帳面。○ 漱石と子規。 士大夫の意識。形式を破壊する動きの碧梧桐。子規-写生への方向。○ 漱石における社会と個人。 『坑夫』。古代の暴君があらわに握っていたむごたらしい力が今でもそのまま社会の底に生きている。『明暗』の小林という妙な存在はそれ。2010/04/26
K.H.
10
第3巻は「夏目漱石」「明治の大衆文学」「明治から大正へ」「志賀直哉」。柳田泉は露伴に親炙し、鷗外を見かけたことがあるが、漱石にはニアミスで終わったとのこと(葬式をやっているところに通りかかったそうな)。本巻はこうしてすでに歴史的存在になっている漱石から始まる一方、最後にテーマとなる志賀直哉は当時まだ現役で作家活動を続けており(参加者はみんな直哉に会ったことがある様子)、この座談会が行われた時代そのものも面白い。だけど老大家直哉にいまさらあれこれ注文をつけるというのはちと酷というもの。2023/02/19
壱萬参仟縁
6
夏目漱石。非常に暗いどす黒い力(19頁)。イメージは悪いが、揺るぎない真実をも想起できる部分か。荒正人氏は、漱石は中性だという(68頁)。神経を病むのだから、男性的でも女性的でもあり、板挟みに遭っていたことは想像に難くない。ブルジョワ・デモクラシー大学気質の慶應という時代もあったようだ(187頁)。柳田氏が指摘するように、田山花袋はあるがままの人生を書く、文学は人生の意味をつかんでいかなければならない、と反復していると指摘(227頁)。永井荷風は文人としてはいいが、人間としては・・・(324頁)残念無念。2013/04/15
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