出版社内容情報
『世界史の構造』では十分に書ききれなかった「帝国」の問題を、従来の歴史観とは全く異なる「交換様式」の観点から解き明かす。近代国家にはない要素を持っていた旧帝国のはらむ可能性を再検討する、柄谷国家論の集大成。ウクライナ戦争の問題を考察するにも必読。巻末に佐藤優氏との対談「柄谷国家論を検討する」を併載。
内容説明
近代国家にはない要素を持っていた旧帝国のはらむ可能性を再検討する、柄谷国家論の集大成。『世界史の構造』では十分に展開できなかった「帝国」の問題を、従来の歴史観とは全く異なる観点から解き明かす。現在の世界戦争の危機について考察するにも必読であり、「交換様式論」の入門としても最適。巻末に佐藤優氏との対談「柄谷国家論を検討する」を併載。
目次
第1章 ヘーゲルの転倒とは何か
第2章 世界史における定住革命
第3章 専制国家と帝国
第4章 東アジアの帝国
第5章 近世の帝国と没落
第6章 帝国と世界共和国
第7章 亜周辺としての日本
対談 柄谷国家論を検討する―帝国と世界共和国の可能性(柄谷行人・佐藤優)
著者等紹介
柄谷行人[カラタニコウジン]
1941年生まれ。哲学者。東京大学経済学部卒。法政大学教授、イェール大学客員教授、コロンビア大学客員教授ほかを歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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キク
58
世界史を「交換様式」で考察していく。国家は「服従と保護」あるいは「略取と再分配」という交換で成り立っているという。「国家による再分配は社会福祉、公共政策という形をとる。結果、国家は共同体がやることを代行しているようにみえるが、そうではない。国家が再分配するのは、略取(課税)を継続的に行うためだ。が、国家はそれをあたかも人民のために行うようにみせている」なので国家とは経済的制度だという。品格とか美しさとか愛情で国家を語られるより、しっくりする。いや、そのへんの本は読まないのであまり詳しくは知らないんだけど。2024/02/07
浅香山三郎
12
『世界史の構造』の分析をさらに展開して、近代世界システムにおける帝国主義とは区別される、歴史上の「帝国」の構造を読み解く。世界=経済(交換様式C)とは違ふ原理をもつ「帝国」(交換様式B)の多民族併呑的支配の中心・周辺・亜周辺といふ区分けにより、歴史上の諸現象を腑分けしてゆき、日本の亜周辺性や、『憲法の無意識』とシンクロする憲法論へも展開してゆく。続く『力と交換様式』も、文庫化をまつて読んでいきたい。2025/05/05
またの名
11
中央集権すなわちガチのえぐい不平等を強く妨げる氏族社会の互酬原理を思想の力で解体し産んだ、中国やローマやロシア等々の帝国。諸民族や諸宗教が当たり前に共存する帝国の安定性に対し、帝国が没落して次の主導権を争う激動期を帝国主義として本書は区別。商人や金貸しではなく生産実態のない金融資本がメインの時こそ帝国主義の競争期になり、地球全体からの搾取が持続不可能な今は必死に資本蓄積を存続しようとして「世界大戦に帰結することは確実です」。国家が武装放棄する贈与の共和国を実現するカギは、最初にその先例を作った日本の憲法。2024/10/12
れいまん
3
池袋コミュニティ・カレッジでの佐藤優氏の「国家と国民」のテキストだったので、図書館で借りたもの 難しかったが、講義を聞いていたせいで、日本は大国の亜周辺で有ることが、大国のシステムを良くカスタマイズできた事がメリットか。近代システムに容易に適合し得たこともそう。まぁ日本は地政学的には良い位置にいるのだと思いました2025/04/02
Y.T.
2
柄谷行人は、東浩紀など批評家たちがよく言及するので認知していて「他者の他者性によく言及する人」ぐらいのイメージだったが、今回初めて著作を読んだ。「生産様式(マルクス)ではなく交換様式で、社会構成体の歴史や現代資本主義を説明しよう」という本。マルクスの意志をマルクスとは別の方法で継承する感じ。やはり柄谷行人は「資本主義の〈外部〉」としての共産主義(=交換様式D)をあきらめてないんだろう。個人的には、遊動民の定住化に伴い最初の交換様式である「互酬的な贈与交換(交換様式A)」が誕生する場面の記述が興味深かった。2025/07/13
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