内容説明
かつて、朝鮮半島の南に浮かぶ島・済州島で、一三〇余りの村が焼かれ、およそ三万人の島民が犠牲となる凄惨な事件が起きた。本書は長年タブーとして封印されてきたその実相を解明し、事件の歴史的背景、真相糾明に向けた困難な闘い、そして歴史と真実を恢復し島共同体が再生していく過程を描く。事件七〇周年を期して増補のうえ文庫化。
目次
第1章 済州島とはどんな島か―神話時代から植民地期まで(皐民(海の民)の時代
海の時代から陸の時代へ
植民地時代の済州島)
第2章 四・三事件への道のり(信託統治の挫折;済州島の人民委員会;三・一節事件)
第3章 四・三事件の経緯と殺戮(武装蜂起;阻止された単独選挙;分断国家の下で;焦土化作戦)
第4章 その後の済州島―沈黙の壁を越えて(沈黙と停滞;変わる済州島社会;蘇る済州島;四・三特別法への道)
終章 記憶をめぐる対話に向けて(残された課題;記憶をめぐる戦争)
著者等紹介
文京洙[ムンギョンス]
1950年東京生まれ。立命館大学国際関係学部特任教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイティ
24
ハンガン著『別れを告げない』から、済州4・3事件について勉強中。基礎的な史実、調査をベースに、もっと手前からその後の流れまで網羅されていて、入門としてとても参考になった。単なる島民抗争でなく、あまりにも複雑な多重構造。小さな点や分岐で起こってしまったというより、この島民感情やイデオロギー、アイデンティティの行き先は必然にすら感じてしまうほど、国そのものが翻弄され続けている。蓋をせず向き合い、調査は必須であり、引き続き関心を持ち理解を深めていきたい。2024/05/30
二人娘の父
12
済州島の歴史から説き起こし、なぜ事件が起きてしまったのか、そして事件の全体像、さらには事件後の被害者および加害者たちの「その後」までを網羅する。入門書として極めて重要な著作ではないだろうか。「なぜ起きてしまったのか」という点で済州島の歴史的文脈と、日帝支配下以来の特殊な政治状況について理解が深まった。課題は、犠牲者・被害者の多くが事件について何も語らぬままできていること、さらにはこの事件を通じて韓国への憎悪が、北への「接近」となった事例(映画「スープとイデオロギー」がその例)の研究と記録であろう。2023/03/04
活字の旅遊人
9
ようやく光が。いい観光地には、暗い過去があるのかな。沖縄やグアムも、、、
晴天
5
済州島で3万人が虐殺された四・三事件について、イデオロギーの文脈を離れて、島への迫害と抵抗という側面から紐解く。自治の気風が強い済州島は、日本降伏後の権力空白期に自治共同体が立ち上げられたが、そうした動きは軍警等によって苛烈な弾圧を受けた。独立の気風の強く、高麗時代から「難治の島」と呼ばれた済州島で、四・三事件の後は目立たず、抵抗せず、力ある者を支持することが島民の生存戦略として定着したという著者の分析から、誰がどんな理由で殺されても不思議ではなかった経験がどれだけ島民を苛んでいるかの片鱗が窺われ、重い。2018/04/29
takao
1
1万人以上が犠牲に2021/07/23