出版社内容情報
激動の幕末維新期に異彩を放ち、今なお多くの人を惹きつけてやまない新選組。その実像に維新史研究の第一人者が信頼に足る史料を駆使して迫った画期的“新選組史論”を、研究の進展を踏まえて増補。「浪士組・新徴組隊士出身地別一覧表」を付載。
内容説明
新選組にまつわる記述はどこまでが史実でどこからが虚構なのか?激動の幕末維新期に異彩を放ち、今なお多くの人を惹きつけてやまない新選組の実像に、維新史研究の第一人者が信頼に足る諸史料を駆使して迫る。幕末期のダイナミックな構造の中に不可欠の要素として新選組を改めて位置づけた画期的な“新選組史論”。研究の進展を踏まえた増補版。「浪士組・新徴組隊士出身地別一覧表」を付載。
目次
問題の所在
幕末の政治過程をどう見るか
一会桑政権と近藤勇
有志集団としての浪士組・新選組
八月一八日事件以前の壬生浪士組の特徴
新選組の性格の多重化
超法規的武装集団化
他の諸集団との対立・抗争
「死さざれば脱隊するを得ず」
組織矛盾とその展開
史実と虚構の区別と判別
新撰組研究の史料論
結論
その後の新撰組研究
著者等紹介
宮地正人[ミヤチマサト]
1944年生まれ。東京大学史料編纂所教授、国立歴史民俗博物館館長を経て、東京大学名誉教授。専攻は日本近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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厩戸皇子そっくりおじさん・寺
57
在野の研究者が書いた新選組本は山ほどあるが、歴史学者が書いた新選組本は松浦玲『新選組』(岩波新書)と本書ぐらいではなかろうか?。密かに名著と言われた本書が増補改訂の上で文庫化された。難しかったが面白かった!。一次史料と政治状況で読み解く新選組。時代小説では割とアホ扱いの近藤勇がいかに優秀有能な幕臣であったか。本書にも松浦玲の本にも、近藤勇の書簡集刊行を願う言葉があるが、今なお刊行されていない(何故岩波は出さないのだ)。今や登場人物が決まってきた幕末史だが、無名の人物が大量に出て来る新鮮な新選組論である。2018/05/13
ASnowyHeron
24
改めて、当時のことで不確かなこと、分かっていないことの多さを感じた。もちろん小説もいいが、こういうところから新選組を眺めるのも、おもしろい。2018/03/18
MUNEKAZ
12
確かな史料に基づき新選組を論じた一冊。先の読めない幕末の京都政局において、局長・近藤勇はどのような政治観で挑んだのか、そして他者からはどう見られていたか。そこからは名うての剣客集団ではなく、有志による政治集団として新選組が浮かび上がる。一次史料や二次史料に対する向き合い方、巷にあふれる俗流歴史本への憤りなど迫力のある記述が続く。ある程度の前提知識が求められるが、新選組に関する学術的な興味を満たしてくれる本であった。2019/07/14
ほうすう
10
史実と虚構を分別して歴史学の観点から新選組を読み解こうという書。新選組成立の時代背景や組織としての立ち位置、近藤勇という人物の政治的立場などが史料をもとに開設されている。特に近藤勇の政治的指導力を好意的に解釈しており新鮮さを感じた。吉村貫一郎や永倉新八の書き方も小説などとは異なる印象を受ける。土方に関しての記述があまりなかったのが個人的には残念だったが史料に基づいた良書である。2022/01/30
Toska
9
非常に面白い。新選組と近藤勇の見方が大きく変わる。彼らの本来の志は攘夷の魁として国のため働くことにあり、近藤はそれだけの政治構想と人脈を持っていた。京洛の治安維持などはアルバイトにすぎなかったはずなのだが、幸か不幸かそちらでも有能で、専らその方面で名を残すことになってしまった。それにしても、彼らを含む有為の士が等しく「攘夷」という排外思想に刺激され、志を得ていった事実には考え込まざるを得ない。2021/12/29