内容説明
心理療法とは、来談者が自分にふさわしい物語をつくりあげるのを援助する仕事だ、と河合隼雄はいう。日本古典の物語には、現代人が自分の人生の物語をつくるうえで参考になる知恵がたくさん詰まっている。うつろう美、殺人なき争い、継子の幸福。夢の重要性…。『竹取物語』『宇津保物語』『落窪物語』『浜松中納言物語』『平中物語』など、九世紀から十一世紀までの日本の王朝物語に現われる様々な物語パターンが、心理療法家独特の目を通して分析される。
目次
第1章 なぜ物語か
第2章 消え去る美
第3章 殺人なき争い
第4章 音の不思議
第5章 継子の幸福
第6章 冗句・定句・畳句―『平中物語』の歌
第7章 物語におけるトポス
第8章 紫マンダラ試案
第9章 『浜松中納言物語』と『更級日記』の夢
第10章 物語を仕掛ける悪
著者等紹介
河合隼雄[カワイハヤオ]
1928年兵庫県生まれ。京都大学理学部卒業。1962年よりユング研究所に留学、ユング派分析家の資格取得。京都大学教授、国際日本文化研究センター所長、文化庁長官を歴任。2007年7月逝去
河合俊雄[カワイトシオ]
1957年奈良県生まれ。京都大学教育学研究科博士課程中退。チューリッヒ大学(Ph.D.)。ユング派分析家資格取得。現在、京都大学こころの未来研究センター教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yumiha
45
『台所で考えた』(若竹千佐子)で紹介されていた本書。臨床心理学者である著者だから、無意識層は広く深く、さまざまな他者として心の側面から体現化すると言う。川柳の友人たちが「句を書くことで意外な自分と出会う」と言うのは、そんな無意識層から浮かび上がってきた自分ちゅうことかな?と思い至った。また本書は、生きてゆく上で自分が納得できる自分の物語が必要だと言う。「知的な因果的把握を超えての納得」は、夢を通してだったり、世代を超えて身体や心に引き継いだものだったり、つまり無意識層を含めての統合的なものだとのこと。2025/03/24
彩菜
40
竹取から源氏まで、心理療法家である著者が王朝物語を読み解きます。移ろう美、直接的争いの忌避、人間存在の根源にあるものとしての悲しみ…共通する傾向を指摘しつつ「とりかえばや」の場所移動が意識から無意識への深度とも見え「源氏」の女性群像が作者の分身のようだと話す著者は、物語を心の内面空間で行われる心理的探求として読むようです。物語は一人の人間と社会との間の葛藤から生まれ、だからその時代や社会を反映すると同時に一人の人間の内界としても読める、それは洋の東西・時代の如何を問わず変わらぬよう。では何故いま古典なのか2023/10/02
本詠み人
28
小川洋子さんの本に引用されていたので原文を確認。心理療法家が物語を語る。心理療法とは来談者が自分の人生を物語ることを援助する仕事で、それが出来れば症状は消え去っているという。自分の人生を物語るのが自分なら、同じ場にいた家族であってもその捉え方ひとつで、全く違う各々の「自分の物語」が出来上がる寸法だ。また、作者不明が特徴の神話の時代の物語や昔話は(口伝だっただろうから)1人の主人公の物語ではなく、その物語を共有した多くの人々によって「われわれの物語」となり(娯楽的な要素も含み)存続してきたのだろう。興味深い2026/02/11
アルピニア
28
主として王朝物語を心理療法の観点から分析、解読している。先日読んだ「生きるとは自分の物語をつくること」で語られていた河合先生の考えをさらに深く知ることができた。特に心理面における物語の必要性、物語の役割について、あぁそうだったのか。と胸にストンと落ちることばがいくつもあった。それとともに中世の日本文学の豊かな創造性にも驚いた。紫式部の「女性の個に対する意識」に関連付けた源氏物語の解釈は私の印象とは異なる捉え方で興味深かった。物語世界に広がる人間の心理を探ることは水の底に深く潜っていくような感覚だった。2016/11/19
ともとも
27
史料を基に心理学的に古典の物語を読み解いていく。 古典の物語には性があって、それがどれも共通している。 平安時代の物語、当時の人間の心情、家族形態、時代背景の現れ? 今後に語り継がれていく生きていく知恵とノウハウ?などなどという感じがしながらも 歴史や文学だけでなく、心理学的に見た物語などなど、とても興味深く、面白い。 古典の世界の奥深さと面白さを痛感しつつも、古典をもっと読んでみたい興味をそそられてしまいました。2016/11/18




