内容説明
ヨーロッパ近代に思想的な新たな地平を切り開いたデカルト。『方法序説』のテキストに即しながら、このあまりにも有名な著作が今日までどのように読まれてきたのか、また現代思想とどのようにかかわるのかを講じる。『方法序説』の思索のプロセスとその背景を追究し、デカルト思想の全体像を平明に読み解いてゆく入門書の決定版。図版多数収録。
目次
第1章 デカルトの生涯と『方法序説』
第2章 『方法序説』の読まれ方、魅力
第3章 書物の学問を捨てて、旅に出る…
第4章 学問の方法と生き方のモラル―炉部屋の思索
第5章 コギト、二元論、自然
第6章 『方法序説』と現代哲学
著者等紹介
谷川多佳子[タニガワタカコ]
1948年東京生まれ。フランス近代哲学を専攻。パリ第一大学哲学博士・文学博士。筑波大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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なの
21
方法序説は既読なのですが、こんなこと書いてあったかなぁ、ということが何度かあった。捉え方が違うのか、そもそも忘れているのか。 背景も書かれていて、少し理解が進みました。いや、やっぱりわかってないかな。 学問から離れ旅の中で人に触れ、隠遁生活のような暮らしの中で形づくられたパラダイムシフト。 なんだか、気が遠くなる。2019/11/02
中年サラリーマン
13
読みやすい。わかりやすい。方法序説を「読む」だけでなく、デカルトの人となり、生涯、考え方、当時全盛だった宗教的考え方への対峙の仕方、彼の哲学が後にいろいろな分野に与えた影響など様々なことに触れられているのがよい。この時代の実験ブームとそれを弾圧するキリスト思想や人間機械論の芽生えなどが心に残った。2014/08/21
またの名
10
ある心優しい男がデカルトの心身二元論に入れ込んだばかりに動物=身体=物体=機械という等式にしたがって町中の犬を惨殺した物語は、フィクションとはいえ当時の人々にとってもデカルト哲学が異様だったことを示していて、興味深い資料。徹底した二元論からもうかがえるように解析幾何学の礎を築き理数系の素養の持ち主だった哲学者による代表作を読み解いて、真か偽かで割り切れない人文系学問を擁護し反対論陣を張ったヴィーコから、現代思想までの様々な反応を取り上げたセミナーの記録。簡易な原著には書かれてない知識と解釈が手軽く学べる。2016/03/18
nrk_baby
7
今まで読んだ哲学書の中で最も感銘を受けた方法序説の主に時代背景などを取り上げた解説書。谷川さんが訳している岩波文庫の方法序説と同じく、読みやすい上に内容が充実していて、満足。2015/01/07
空箱零士
7
『方法序説』の読解を中心にデカルトの生涯や後世の評価が短いながら平易かつ明解にまとめられている。現在は毀誉褒貶が激しい印象のある『方法序説』だが、読解の背景にデカルトの生涯を添えることで氏の人となりや時代背景も同時に理解でき、一面的な理解に留まらない奥行きのある読解となっている。コギトや機械論などのタームを巡りデカルト自身とデカルト主義の乖離の指摘もされており、タームそのものと合わせ興味深く思った。疑いようのない私と完全なるもの。二元論から派生した機械論。原著を読む際に留意したい点も見つかり有意義だった。2014/08/21