出版社内容情報
民衆思想史の立場から「近代」の意味を問い続けてきた著者が,眼を現代に転じ,1970年代以降の思想状況の批判的読解に挑む.戦後社会を形作った学問・思想の諸潮流を大胆に整理し明快な見取り図を描くとともに,丸山眞男の思想史学,20世紀日本の経験,歴史学の可能性を論じて,日本のこれからの思想的課題を見通す.(解説=小高賢)
内容説明
民衆思想史の立場から「近代」の意味を問い続けてきた著者が、眼を現代に転じ、一九七〇年代以降の思想状況の批判的読解に挑む。戦後社会を形作った学問・思想の諸潮流を大胆に整理し明快な見取り図を描くとともに、丸山眞男の思想史学、二〇世紀日本の経験、歴史学の可能性を論じて、日本のこれからの思想的課題を見通す。
目次
1 思想と状況(現代日本の思想状況;戦後思想史のなかの「民衆」と「大衆」;天皇制批判の展開―講座派・丸山学派・戦後歴史学)
2 方法への架橋(表象と意味の歴史学;丸山思想史学と思惟様式論;二〇世紀日本をどうとらえるか)
著者等紹介
安丸良夫[ヤスマルヨシオ]
1934年富山県生まれ。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。一橋大学名誉教授。日本思想史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nbhd
18
この本を手に取った理由は、戦後思想における松下幸之助さんについて書かれていたからだ(第1章現代日本の思想状況:「会社」主義の構想力)。著者は次のように書いている→「松下の思想は、企業に製品やサービスを求める世間大衆の欲望を神のような究極存在とし、それに最大限の有効性で対応するような献身を企業関係者にきびしく求めるものだといえる。(中略)それは、ほとんど不可能にみえるほどの努力と献身を従業員や下請け企業に要求しうるものであり、信念に基づいているだけにいっそう始末の悪い日本的経営の哲学である」。2024/08/06
Eiki Natori
4
16年前の本なのに、全く色褪せない。安丸がどのように歴史と向き合い「現代」を論じる一冊。「民衆」「大衆」といった言葉の定義、天皇制、丸山眞男批判。安丸といえば「通俗道徳」という民衆の意識形成の根底となってきた単語がキーワードだ。「勤勉・倹約・正直・孝行からなる通俗道徳は近代化過程における民衆の自立・自律の具体的形態となるのであり、通俗道徳には近代主義的な理念とは全く異なる意味での広範な人々の主体性・能動性が強く表現されているのである」。 これを理解しないと生活保護バッシングなどの根本が理解できないと思う。2020/12/31
uehara
1
戦後日本思想をある程度知っている人には読みやすいか。3章「天皇制批判の展開ー講座派・丸山学派・戦後歴史学」では歴史学における議論参照案内に、5章「丸山思想史学と思惟様式論」は丸山の自任するマンハイムの影響と実際の距離をはかってから初期から後期に通底・発展する丸山の方法論を剔抉する。2024/07/30
kushuka
1
章ごとのクオリティが全く異なる。丸山をマンハイムの影響から批判する5章はピカイチ。著者の本業である民衆史と天皇制に関わる2&3章はさっくりとしているけれど良いまとめ。1&6章はそこらの政治評論家みたいで飛ばし読みしました。安丸入門としてはいいんじゃないでしょうか。2013/01/15
湯豆腐
0
もともと初学者向けに書かれたものではないので、ある程度各思想家の論に関する知識があった方が読みやすいかもしれない。構造主義やポストモダン、社会史などの自分より後の世代の潮流を積極的に吸収していく研究者としての姿勢に敬意。2015/12/14