内容説明
明治精神のバックボーンとは何か。福沢諭吉、植木枝盛、中江兆民、徳富蘇峰、陸羯南、内村鑑三、そして幸徳秋水ら初期社会主義者たちの思想構造を時代状況とのかかわりで解明するとともに、明治という時代を貫く思想の流れを明らかにしようとする本書は、思想史になじみの薄い読者にも分かりやすい怡好の近代日本思想史入門である。
目次
序章 明治精神への視座
1 明治精神のバックボーン
2 啓蒙の精神―福沢諭吉
3 民権の思想―植木枝盛
4 民権の哲学―中江兆民
5 平民主義の思想像―徳富蘇峰
6 国粋主義の国家像―政教社の人びと
7 愛国と平和主義―内村鑑三
8 黎明期の社会主義―平民社の人びと
終章 明治の終焉
著者等紹介
松本三之介[マツモトサンノスケ]
1926年茨城県生まれ。東京大学法学部卒業。東京教育大学文学部教授、東京大学法学部教授、駿河台大学法学部教授などを歴任。東京大学名誉教授、駿河台大学名誉教授。日本政治思想史専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かんがく
8
福沢の啓蒙思想、植木・中江の民権論、蘇峰の平民主義、政教社の国粋主義、陸の国民主義、内村のキリスト教、幸徳の社会主義。明治期の諸思想を、豊富な史料の引用とともに解説している。全ての思想に国家色、愛国色はあるが、後々の国家主義のように排他的、独善的なものではない。条約改正や帝国主義などの中で、国家の独立という点がとても重要であることがわかる。2018/08/13
プリン
4
国権と民権、平民主義に国粋主義、そして社会主義の黎明。明治を通観したときの諸思想を、それらを代表する知識人に語らせる形式で記されたのが本書。入門書のため内容的にはやや薄いので、詳細を知りたい場合には一人一人の思想家に当たる必要があります。久しぶりに硬い本を読んだせいか、何だか肩が凝りました(^^ゞ2013/09/19
politics
2
明治期の代表的思想家が皆、ある程度愛国主義の観を持ってそこから各々の思想を紡いでいたとのこと。そして民衆思想のように捉われがちな自由民権思想も国家主義的な色彩が強かったということは、ほぼ定説になりつつあるのかなと感じた。その明治の思想が変化しはじめるのが幸徳秋水ら社会主義・無政府主義の思想家の登場と日露戦後の「国是」の喪失等にあるとされている。2019/08/28
Hisashi Tokunaga
0
10数年まえ、1970年代当時のNHK放送大学テクストを再読した。明治議会主義の特徴を、対立する意見の主張は秩序を乱すものとされ、政治批判は反逆ともされる時代ゆえに議会政治は理解不能と映じたーー と、解説いただいた。著者の主観が入りすぎてないかと訝るところである。(2013・3記)
takashi1982
0
著者は丸山真男門下で、丸山の後を継いで東大の日本政治思想史講座を担当した。専門は近代日本政治思想である。2012/10/10