内容説明
被爆者の心に癒えぬ傷を残した原爆体験。インタビューが行われた一九六二年当時、街は復興への道を歩む一方、冷戦下で核実験が繰り返された。被爆者はこの時代にどのような葛藤を抱え、生への道を歩もうとしていたのか。また、原爆投下者・占領統治者としてのアメリカに抱く思いはどうか。ナチ強制収容所の生存者のケースにも触れながら、被爆者の深刻な葛藤と体験克服に至る過程を、「被爆者の英知」として導き出す。
目次
第7章 解けやらぬ葛藤―信頼、平和、そして克服(相争う二つの要素;原爆記念;平和の諸次元;広島と長崎―それぞれに「固有な」原爆以後の行動)
第8章 アメリカ認識(被爆と被爆後;その後とアメリカの代弁者;モルモット;出しゃばりなアメリカ人)
第9章 精神的再形成・自己と世界(二つの型―無抵抗と使命感;否定性、無、及びそれらを超えるもの)
第10章 生存者(死の刻印;死に対する罪意識;精神的麻痺;保護と伝染;精神的再形成;生存者の世界)
著者等紹介
リフトン,ロバート・J.[リフトン,ロバートJ.][Lifton,Robert Jay]
1926年、ニューヨーク生まれ。精神科医。ハーバード大学、イェール大学を経て、現在、ニューヨーク市立大学名誉教授、ハーバード大学医学部精神科講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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かじやん0514
1
ヒバクシャは、被ばく体験をどのように受け止め、乗り越えて(又は乗り越えられなくて)きたのか。それを克明につづる。原爆でなくなった方々への鎮魂歌。2010/08/19
misman
0
リフトンの深い眼差しと被爆者への同情の念を感じる。「現代、死にふれて生きる」とは違い、被爆者の方々の証言を多く掲載してあり、人々の心の機微を間近に感じ、リフトンの発見した心理的麻痺の状態を理解することができた。客観的視点であることも、主観的になりがちな戦争記録とは一線を画しているのではないだろうか。とはいえ、被爆者の心理的なことのみならず、日本人特有の考え、アウシュヴィッツとの比較などを盛り込んだ本書は、これからの21世紀を生き抜く上で知るべき大変重要な研究の成果であったと思う。多くの方に読んで頂きたい。2015/09/06