内容説明
カウンセラーが、実際のカウンセリング場面で直面する問題とは何か?スイスのユング研究所で学び、日本にユング派の心理療法を初めて本格的に導入した著者自身が、体当たりで行なったカウンセリング体験の例などを紹介しながら、カウンセラーの心がまえとして何が必要かを語る。河合心理療法入門の実践編。カウンセラーを目指す人はもちろん、教育者などカウンセリングに関わるすべての人に役立つ本。
目次
第1章 カウンセリングとは何か
第2章 カウンセリングの過程
第3章 心の構造
第4章 カウンセラーの態度と理論
第5章 ひとつの事例
第6章 カウンセリングの終結と評価
第7章 カウンセラーとクライエントの関係
第8章 カウンセラーの仕事
著者等紹介
河合隼雄[カワイハヤオ]
1928年兵庫県生まれ。京都大学理学部卒業。1962年よりユング研究所に留学、ユング派分析家の資格取得。京都大学教授、国際日本文化研究センター所長、文化庁長官を歴任。2007年7月逝去
河合俊雄[カワイトシオ]
1957年奈良県生まれ。京都大学教育学研究科博士課程修了。ユング派分析家資格取得。京都大学こころの未来研究センター教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きょちょ
21
昭和40年代に書かれた本だが、カウンセラーそしてカウンセラーを目指す人にはとても良い本。 人の話を「聴く」ことがなぜ難しいのか良く理解できる。 しかし、カウンセリングは「聴く」ことは大事だがそれだけではない。 従って、型にはまったやり方だけでは通用しない。 仕事をマニュアル的にとらえる人は、カウンセラーになるべきではない。 何故ならクライアントは人間なので、一人ひとり異なるから。 そしてカウンセラーになるには相当の覚悟が必要だ。 河合先生ほどの覚悟を持てる人が一体どれくらい現実にいるだろうか? ★★★★2020/08/15
zoe
16
ひと山を超えた、という言い方。転移と限界。治すのか治るのかと、良くも知らない外野からあれこれと言われてしまうこともある難しい世界ということが分かりました。具体例を共有するということが重要である一方で、ケースバイケースでもある。完全を目指すと終われない。2022/12/10
roughfractus02
10
安定した著者の語りの外にクライエントとの不安定かつ矛盾に満ち、度重なるジレンマの中で作られた深い経験がある。その一端を読者は言葉を通して触れる。そんな本だ。カウンセリングは著者には人間の二律背反的な生を引き受ける体験である。カウンセラーが治すこととクライエントが治ることの一方に重点を置けば関係は崩れる。診療の制約を破り、単なる親しみに陥る危険に対峙しつつ試行錯誤する過程から見えるのは、治療者グループや家族のメンバーからなる関係の網の目世界へ向けて自己の壁を徐々に低くしていく、両者の無意識の相互努力である。2022/12/03
らい
8
なんだろうなこの安心感、安定感、と思って読んでいたら、実際に終盤に著者が基本的な安定感の大切さについて述べていて、あぁこれかぁと妙に腑に落ちた。カウンセリングに携わってる人間じゃないけど、実際の生活の中でも当てはまることが多くて、コミュニケーションの意味を考えさせられた。内容だけじゃなくて、今だから話せること、今は話せないこと、深化していくこともあること、いろんな心の動きと繋がっていて、挨拶や謝罪や感謝の表明ひとつにしても、その仕方や変化には大きな意味があるんだなあ。何かあればこの人に戻ってきたい安定感。2020/11/03
マル
8
河合隼雄先生が実際に行ったカウンセリングを例に挙げて、とても丁寧にカウンセリングとはどういうものかを説明してくれております。本書の中でも河合先生が言及されておりますが、カウンセリングというお仕事は本当に難しいものだということが分かりました。しかし、カウンセリングという職業ほど現在の日本社会に必要なものはないのではないかとも思います。カウンセラーは自らの全存在を懸けて患者さんの話に耳を傾ける職業だそうで、その姿勢によって患者さんは悩みを解消していくことができるそうです。ですが、毎回成功するということは(続く2015/12/10