内容説明
戦後史の謎であり続けた全一一回の極秘会談。二人が何を話したのか、その核心部分が、著者が解説した膨大な未解明の新資料によって初めて明らかにされた。両者の会談のみならず全米に対する昭和天皇の外交を精緻に描き出した本書は、戦後レジーム形成に天皇が極めて能動的に関与した衝撃の事実を描き出し、従来の昭和天皇像、戦後史観を根底から覆す。
目次
第1章 「昭和天皇・マッカーサー会見」の歴史的位置(第一回会見の検証;「空白」の戦後史)
第2章 昭和天皇と「東条非難」
第3章 「松井文書」の会見記録を読み解く
第4章 戦後体制の形成と昭和天皇
著者等紹介
豊下楢彦[トヨシタナラヒコ]
1945年兵庫県生まれ。京都大学法学部卒業。現在、関西学院大学法学部教授。専攻=国際政治論・外交史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
kokada_jnet
74
美談的になっている昭和天皇とマッカーサーとの会見の談話内容の「定説」は間違いであり。日米開戦の際は東条にだまされたと、自分の責任を逃れるために言っていたということを、非公開を含む多くの資料から、解き明かした本。「立憲君主」と自称していた昭和天皇は、戦前・戦後を問わず、実際は多くの政治的な行動を起こしていた。2023/04/16
Willie the Wildcat
67
丹念に記録を積み重ね、それらに基づく論理的検証と導き出す推察。敗戦国の戦後処理を巡る東西の神経戦と、朝鮮戦争に代表されるH2Hの陣取り合戦。日米双方の思惑の交錯が、二重外交の土壌。戦前から、大なり小なり営まれていたであろう「受動的&能動的君主」の使い分けが、基本戦略也。その”代償”は歴史が評価するのであり、原理原則だけで語るのは非論理的。但し、不十分な情報公開が、物心両面の風化を加速。結果、代償の補償と”原状回復”の現状分析、そしてその評価も闇の中、という方程式。2023/10/06
おさむ
42
最近、憲法関係の本を読み漁っていますが、これは名著でした。まさに歴史探偵。昭和天皇とマッカーサーの会見記録が公開される前からさまざまな史料を基に両者が憲法と日米安保で互いに利用しあっていたという仮説(今ではかなり信憑性が高い学説)をたてていた慧眼に驚きます。2016/11/02
ワッピー
25
昭和天皇とマッカーサーの会見の内容に始まる日米交渉の資料から、天皇の果たした重要な役割を明らかにする労作。新憲法の制定、米軍の沖縄駐留、日米安保、靖国問題などの根幹にある基本思想は、この会談で天皇が明確に示されている。当時の連合国側の(特に米ソの)綱引き、マッカーサーの権限解釈など怪しい状況の中で、戦後体制が作られたということも明示されていて、特に日本の近現代史について不勉強のワッピーには大いなる啓発でした。2019/05/09
Toska
22
昭和天皇が我が身を捨てる覚悟でマッカーサーを感動させたというのは、日米合作の神話にすぎなかった。天皇がこの神話を欲したのは勿論だが、マッカーサーの方も来日直後は意外に足元が定まっておらず(本国との不安定な関係など)、日本統治のパートナーとして天皇の権威を必要としていた。諸資料を丹念に読み解きながら関係者の思惑を浮かび上がらせていく著者の手並みは鮮やかで、スリリングな読み味がある。2024/06/24