内容説明
竹内好(一九一〇~七七)は単なる中国文学者ではない。魯迅を精神の糧とし、戦争体験を反芻しつつ、近代日本への根源的批判を続けた自立の思想家であった。その生涯の課題は今、アジア諸国に波紋を呼ぶ。近代とは何か、中国論、ナショナリズム、アジア主義、日本イデオロギー等々を、戦後世代の第一人者が読み解く渾身の評伝。
目次
序章―生きるかたち
学問する情熱の章
故郷喪失の章
共同体論に関する章
日本浪曼派との訣別の章
いまだ生まれ出でざる言葉の章
『魯迅』の世界
体験とその意味についての章
近代の批判に関する章
ナショナリズムとアジアの章
啓蒙者の位相の章
著者等紹介
松本健一[マツモトケンイチ]
1946年群馬県に生まれる。東京大学経済学部卒業。評論家。麗沢大学教授
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感想・レビュー
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うえ
7
「政治と文学の二律背反の象徴…この二律背反を矛盾的自己同一として生きたのが、魯迅であった。いわば、魯迅はレーニンの道を選ばず、ドストエフスキイの道をも選ばず、両者の矛盾的自己同一としてのトルストイの道を選びとったのである。…そういえば、竹内好もドストエフスキイをあまり好まない。好むのはトルストイである。かれは、近代文学派の人びとのうちでは、平野謙(ドストエフスキイ派)でも小田切秀雄(レーニン派)でもなく、戦争中に「戦争と平和」論(トルストイ)を書いていた本多秋五にちかい。」2025/06/24
Ikkoku-Kan Is Forever..!!
1
20代の終わりに書いたのか・・・。竹内好の年表を頭に思い浮かべながら、その意味を追いつつ竹内の思想に迫るわけだけど、その論点は多い。/竹内にとって魯迅とは/竹内にとってアジアとは何か→その問題提起から「方法」としてのアジアまでの展開/国民文学論争における竹内の問題意識(竹内にとって天皇制とは?)/総じて「思想としての竹内好」とは何かという問い。これをどう読むかとなると「竹内好という問題」。それは日本における「近代」とは何かという命題への問いかけにおいて、竹内もまた、そのメルクマールになっているということ。2013/04/11
tkm66
0
・・どうも松本健一に論じられると、その対象がエラく軽くなってしまう、との覚えが。2005/06/22
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