岩波現代文庫
江戸人とユートピア

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  • サイズ 文庫判/ページ数 253p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784006001216
  • NDC分類 210.5
  • Cコード C0195

出版社内容情報

社会の閉塞状況からの脱出を模索した近世人.彼らが構築したユートピアの実相を,世間咄の世界や五世団十郎,荻生徂徠,服部南郭らを例に魅力的に論じる.学問と文学の接触こそが江戸中期文学史の特徴という持論を実証した好著.

内容説明

近世中期以降、社会の閉塞状況からの脱出を模索する人々は、各人の環境に応じて様々なユートピアのイメージを構築した。著者は庶民の世間咄の世界をはじめ、五世団十郎、荻生徂徠、服部南郭らの構想したユートピアの実相とその背景を十分に魅力的に論じる。学問と文学の接触こそが江戸中期文学史の最大の特徴という持論を実証した好著。

目次

世間咄の世界(世界咄盛行の所以;異事奇聞の伝達者 ほか)
虚構の文華―五世市川団十郎の世界(虚像と実像の相克;狂歌壇との交渉 ほか)
“謀叛人”荻生徂徠(経世済民と古文辞学;制度万能論 ほか)
壷中の天―服部南郭の詩境(文人の手本;自己の虚構化 ほか)
偽証と仮託―古代学者の遊び(偽書の季節;自己表現としての偽書・偽証 ほか)

著者等紹介

日野龍夫[ヒノタツオ]
1940‐2003年。東京都生まれ。京都大学文学部卒業。京都大学名誉教授。京都大学文学博士。近世文学専攻
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

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HANA

53
団十郎、徂徠、南郭、偽書。江戸の文人や世間噺を論じた一冊。題名からは平田篤胤の幽冥界みたいなこの世ならぬ世界を論じたものかと想像していたが、実際は地味というか極めて地に足が付いた研究であった。ここで挙げられている各人が持つこの世とは別のものにあくがれいずる気持をユートピアと言っているのかな。団十郎や南郭はその背後に見える遁世じみたものを描いて興味深いし、荻生徂徠はその思想の一から詳しく解説してくれているので僕のような素人にもわかりやすく楽しめた。読み終えた後、各人の背後に一抹の寂寥を感じもしたが。2016/01/20

恋愛爆弾

14
私がずっと読みたかった本はこれでした。あなたはどうですか、とこれから読む人たちに問いかけたくなる。2024/02/03

iwasabi47

2
泰平の江戸から心中で、引退で、古の道へ、壺中へ、偽史へ「どこにもない場所」逃れようする。「謀反人、荻生徂徠」は私のような初学者にも面白かった。2023/12/05

きさらぎ

2
一般向け?とはいえ、一応も二応も学者の本だと思って読み始めたら、しょっぱなから「柔らかい魂」などという情緒的な表現に出くわして面食らう。団十郎、徂徠、南郭を扱う章が面白かった。狂歌の世界に遊んでも「団十郎でない部分を認められなかった」団十郎の寂寥と矜恃、人間性への信頼が制度万能主義へと転じてゆく「謀反人」徂徠を描く著者の愛情と哀感、壺中に閉じこもるようにして傷つきやすい自我を守ろうとした南郭の内にある甘美な感傷や自己憐憫。イメージ豊かに共感をこめて綴られる人物評論が心地よいです。2014/12/26

橘 劫

1
江戸の人が旅人から見聞きした話や事件を歌舞伎などで鑑賞するのは自分の今いる世界とは別の世界に恋い焦がれているかららしい。この考えは自分のなにかに波紋が生じた気がした。2018/09/29

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