出版社内容情報
柳条湖事件から敗戦までの15年にわたる戦争を大観し,その基本的性格を追究した意欲的労作.なぜ戦争が阻止できなかったのか,戦争はどのようにして進められ,どのような結果をもたらしたのか.膨大な史料から全容に迫る.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nnpusnsn1945
44
現在では古いないし正確性の疑われる文献(吉田清治の本など)が使われており、ベトナム戦争でベトナム側を善玉として単純化している等の短所はあるが、それらを差し引いても十五年戦争についてまとめた本として読む価値はある。あとがきに、著者の父である陸軍少将家永直太郎の遺品から出た、台湾出兵で捕虜を処刑する写真が掲載されている。著者は写真を日本軍の行動様式のプロトタイプだと説明している。まことに遺憾ではあるが、控え目に考えてもそう言わざるを得ない。明治からの日本の問題点も触れている。ただし、大正時代はあまりない。2021/02/24
おたま
22
太平洋戦争が何故起こったのか、という問いに答えられないがため本書を読んでみた。本書は、初版が1968年。増補改訂を経て1986年に第二版出版。その間に見つけ出された新資料等を大幅に加えている。著者の家永三郎氏は教科書裁判の原告にもなった方。太平洋戦争がどういうものであったのかが、次第に忘れ去られようとしているのに抗いながら、歴史家としての「痛覚」から本書を執筆したという。専門分野である思想史、法制史の視点から、膨大な資料(そこには日記や手紙も含まれる)を駆使して、太平洋戦争の全体像に迫ろうとしている。2021/02/01
takeapple
13
戦争を体験したら歴史学者の良心というべき書。学生時代から私も何度となくこの本からの影響を受けて来た。戦争の記憶が薄れている今こそ読み直す価値があると思う。日本がこの戦争に敗れたのは、アメリカの物量にではなく、中国の民主主義にだということが印象であり、コロナとオリンピックに向かう現政府と、当時の軍と政府が重なってしまう。更に日本陸軍の横暴は、関わった多くの人の手記に見えるということ、外国での暴虐の限りを実証的に見ると大東亜共栄圏のインチキ、日本ありがとうの胡散臭さが際立つ。2021/06/05
Hiroshi
9
戦記では無い。侵略戦争の実体を厖大な文献に基づいて明らかにしていく本。1966年に第1版が出され、86年に基本構成は変えないが数百か所にわたり局部的増補改訂を行い第2版としたという。旧版を読んだ可能性がある。般教で著者の講義を受けており、その時のテキストが第1版の可能性があるのだ。当時はまだ中国が日本に対して戦争責任を追及していない時代だ。『海と毒薬』で九州大学生体解剖事件は知っていたが、731部隊や南京虐殺を新たに知り、先生が生々しく語るのでショックを受けたのだ。マルタが実験体であることをこの時覚えた。2025/03/01
それん君
6
家永三郎は日本の教科書検定の裁判で闘った歴史家。 今回は部分読みをしました。 日本の朝鮮人、中国人に対する差別はどういうものか見てみました。 日本の差別はアーレントの分析したユダヤ人差別とはその発生の仕方が違っていると思いました。 『超国家主義の論理と心理』にある「抑圧の移譲」の最終形態が朝鮮人、中国人に対する差別意識に繋がっている。アーレントのユダヤ人憎悪の分析とは違っているのかなぁと思いました。 だから朝鮮人、中国人は「憎しみ」というより「蔑み」の差別。ユダヤ人の場合はその逆で憎しみの差別だったのかと2017/12/03
-
- 和書
- 本山雑記 常民資料叢書
-
- 和書
- 貧しい人々と賀川豊彦