出版社内容情報
20世紀の科学的言語学の基礎を築き,近代言語学の父といわれるソシュール.彼の言語理論が言語学にもたらした革命的な転換と,言語学を超えた思想全般にわたる先駆的な貢献について,気鋭の文芸批評家が明解に論じる.
内容説明
二〇世紀の科学的言語学の基礎を築き、近代言語学の父といわれるソシュール。本書は、彼の言語理論が言語学に革命的な転換をもたらしたことを明らかにする。さらに言語学を超えて、記号学や構造主義を促進し、関係性に着目する近代的な思考を可能ならしめた、その思想の先駆的な貢献について気鋭の文芸批評家が明快に論じる。
目次
第1章 人と『講義』
第2章 ソシュールの言語理論
第3章 ソシュール理論の位置
第4章 記号学―ソシュールの遺産
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
またの名
14
訳者後書きを真剣に読むと「水子」でゲシュタルト崩壊する。パフォーマンスの魅力含め巧みなソシュール解説家の丸山圭三郎に比べると地味に見えなくもない本書の特徴は、アメリカ言語学とのローカルな緊張関係が多めに言及されている点。かの地にはチョムスキー御大が君臨してるのであえて生成文法を選ばない理由について触れる必要があったらしく、そちら側からのソシュール批判へ返答。記号と記号が対立する差異の体系からしか意味は生じないとする理論の重要性を説いてロゴス中心主義との批判にも反論するなど、コンパクトながら多方面に目配り。2017/02/04
高橋大輝
11
科学は唯物論を用いて世界を把握していく学問であるが果たして真なる物資と言えるものは存在するか。この考察をすると、真なる物資は存在せず我々はあくまで世界を分節して捉えているに過ぎない、そしてその分節を許しているのは我々の観念でありそれは集団的に生成されるものだ、と分かる。20世紀始め、社会学におけるデュルケム、心理学におけるフロイト、そして言語学におけるソシュールがその発見へ辿り着いた。現代思想に強く影響を与えた彼らの思想を理解するために、本書は素晴らしい説明を提供してくれるであろう。2017/12/12
Ryo
7
再読。ソシュールの思想を説明しつつ、ソシュールの思想がどのように世界にインパクトを与えたのかという事を説明する。多分、ソシュールの一般言語学講義を読む前に読んでおくと良さそうな本。次はそっちに挑戦したいな。2020/04/15
Ryo
6
今当たり前の様に考ている思想は、必ずしも昔から人が持っていた訳ではない多くのコンセプトを哲学から得る事によって今に思考に至った。この本では言語学に端を発し、記号学を創始する事によって、現在当たり前の思考となる記号性に至る道筋を示す、言語というものは、森羅万象を区別する事から始まった。本書中で例に挙げられる様に、茶色はどこまでが黄色で、どこらが茶色かという区別なくして茶色という概念は生まれ得ない。茶色はなぜ茶色と言うのか。我々漢字という象形文字文化には理解しづらいが、茶色という形で茶色が示される所以はない。2019/01/06
NICK
5
同時代ライブラリー版で読んだ。ソシュールの理論や言語学史における位置、また展望についてコンパクトにまとまっている。丸山圭三郎の『ソシュールの思想』は難しかった覚えがあるので、初学者にはこっちの方がいいかもしれない。ところで気になったのは「ソシュール、デュルケム、フロイトによって創始された教科は、以前には主体に属していたものを砕き取り、遂には主体は意味の中心もしくは源泉としての位置を失った」とある部分。時枝誠記はそうした言語観、人間観を批判しようと言語過程説を唱えたわけだが……2011/12/15