出版社内容情報
幼時の夢幻劇体験が見出した,時間と空間が融け合う民衆文化の古層への回路.この感受性は,西洋の学問を吸収して独特の思索を紡いだ.近代合理主義と独自の構想力の葛藤が生み出す著作群.原点にふれる新しい和辻像.土屋恵一郎〈解説〉
内容説明
七歳のときの夢幻劇体験が見出した民衆文化の古層への回路。時間と空間が融け合う世界を感知する資質は、西洋の学問を吸収してもなお独特の思索を紡いでいった。近代哲学の存在論と、直観を手がかりに個の内側から他なるものの理解へ至ろうとする構想力の葛藤が生み出す著作群。思想の原点にふれるまったく新しい和辻像。
目次
第1章 見出された時
第2章 人としてあること
第3章 風土としての空間
第4章 巡礼の時間
第5章 かたりの時空
第6章 失われた時
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さえきかずひこ
13
読みながら強く感じたことは、その批判も含めて著者が心の底から和辻を愛していることに尽きる。解説の土屋も指摘しているが、『古寺巡礼』を評する部分の引用の多さは坂部恵の同書に対する熱烈な情愛に満ち溢れていて印象に残る。また和辻の美的経験の方法が、現象学のそれと類似しているのではと思わずにはいられなかった。読者の多くが美の本質を再構成するその流麗闊達な文体を眺めるとき、学問の人を超えて彼の人物としての豊穣さを垣間見ることができるだろう。和辻の想像力の壮大で深みのある羽ばたきは同時代の折口信夫に通ずるように思う。2019/09/13
うえ
4
この語りの比較思想は面白い。「明治維新での伝統破壊をいたく嘆かざるを得なかった和辻にくらべて、わずか十数年のちがいにすぎないとはいえ、なお遠い過去の時代の構想力の呼吸をみずからの生きた身体記憶のなかに保存しえた柳田の立場上の優位は…この一点に関するかぎり動かしえないだろう。…復元する作業が、そのまま、また一つのすぐれた<かたり>になりうることの自在さにおいて、通時的にも共時的にも、それに到達しえた実年齢からみても、あるいは方法的手続の難易からみても、柳田は和辻にたいして期せずして優位に立ちえたのである。」2025/04/12
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