出版社内容情報
ソ連「封じ込め政策」の理論的基礎を示すなどアメリカの世界政策を構想した著者が,アメリカ外交の伝統における現実感覚の欠如を批判しつつ,対ソ関係,核問題までを論じ世界的反響をまきおこした外交論の古典.
内容説明
1900年からの50年間にアメリカがとった外交上の態度を徹底検証した講演集に加え、ソ連「封じ込め政策」の理論的基礎を示し反響を呼んだ論文等を収録。アメリカの戦後世界政策を構想した著者ケナンが、アメリカ外交の伝統における現実感覚の欠如を批判しつつ、そのあるべき姿を提言した外交論の教科書ともいうべき古典。
目次
スペインとの戦争
ヒッピスレー氏と門戸開放主義
アメリカと東洋
第一次世界大戦
第二次世界大戦
現代世界の外交
ソヴェトの行動の源泉
アメリカとロシアの将来
ウォルグリーン講演の回顧
アメリカ外交と軍部
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
TS10
21
20世紀のアメリカ外交を批判的に検討した講演録。アメリカの植民地領有を批判し、軍事力と政治的影響力との峻別を説く姿からは、単なる紋切り型のリアリストとして割り切り得ないケナンの冷徹な批判精神が浮かび上がる。ソ連の助勢を得ることで、民主主義陣営は第二次世界大戦に勝利した以上、その戦果は限定的にならざるを得ないとケナンは説く。外交や戦争がもたらし得る利益の限界について、彼は非常に自覚的であった。2023/12/31
紙狸
18
2000年刊行。対ソ連「封じ込め」政策で知られる米外交官ケナンの論文集。ウクライナ危機の中、ロシアを再考しようと再読した。米ソ冷戦最中の51年に発表された「アメリカとロシアの将来」が収められている。ロシアがこんな風に変化したらいいという、ありうべきビジョンを語る。そうしたロシアは他の国民を抑圧しないでほしい。という文脈でウクライナについて言及する。「言語的・文化的統一体として発展する必要と可能性」を認められるべきだ、と。ケナンは慧眼の持ち主だった。「ロシアの国民の偉大さ」を忘れてはならないとも強調する。2022/04/04
coolflat
14
封じ込め理論でおなじみケナンによる、米西戦争~WW1~WW2~冷戦におけるアメリカ外交の考察。WW1について。アメリカにとって欧州の勢力均衡こそが、大規模な軍備負担をせず、経済発展を継続することが可能な政治的要件であったということ。その欧州の勢力均衡を崩したのはドイツ。19世紀後半、オーストリアからドイツへの権力の漸次的移転がなされた。オーストリアは、英国に対し海上及び通商上の競争者となるチャンスを持っていなかった。それに対しドイツは挑発的にこれに挑戦した。ドイツは英国に非常な憂慮と不安定感を与えた。 2016/05/11
masabi
13
ソ連封じ込め政策を提唱したケナンの講演、論文集である。当初は政治的に対抗する目的だった政策が説明不足と軍産複合体の思惑とが絡み軍事力による対抗へと変容した。その結果、膨大な赤字を抱えるに至った。対ソ連を意識して日本の復興を考えたが、思惑と異なり再軍備にまでになると影響力を持っていても限度があることや世論やロビー活動の政治的影響力を思い知った。アメリカに欠けているのは一貫した政治思想や理念であるとする。これは現在でも残っていると考える。2014/12/06
大森黃馨
6
もし彼の主張する外交政策が取り入れられていたら朝鮮戦争やベトナム戦争の流れも変わっていたかもしれないと言われるジョージ・Fケナンの講演列びに論文を収録した書だが今日に於いての中国やイスラム国等の台頭と脅威について予測は流石に不能としても対応対処方法についてどうすべきかの考えはお持ちではなかったでだろうか氏の著作にそれに関する何かヒントになるものはないかこの対ソビエトの思考は今日のそれらにも適応しうるのか私は悩む 2023/01/03