出版社内容情報
人びとのニーズに応えて社会保障を提供するはずの福祉国家。しかし、その成り立ちはむしろ国家のニーズに応えるものだった。セーフティネット(安全網)というイメージの背後には、源泉徴収や統計調査などの「掌握網」を用いて人間を分類する官僚制の論理がある。その論理と葛藤する人々の姿を描き、通説を大胆に覆す一冊。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
67
今まで読んできた福祉国家に関する本とは切り口が異なり、官僚制が人間を「標準的な人間」「保護すべき人間」「排除すべき人間」に区分して、それぞれに対する実にマニュアル的な対応をする仕組みとして捉える。日本の場合社会保障が本格化するのが戦争の最中ということもあり、こうした区分が戦後~現在まで引きつがれている。そうすると、この区分にあてはまらない人間(実は著者も経験している)は、エアポケットに落ちたように苦しむことになる。そして官僚制故に、きめの細かい対処は困難。福祉国家の課題を斬新な切り口で論じた良書だ。2026/10/31
フクロウ
5
福祉国家は福祉(利益)を与えるある人間集団をモデリングするのであり、その際に典型的な属性を括り出す。まぁこれだけなら福祉国家に限らず国家による政策、なかでも法によるそれをする場合には、当たり前の話である。この本の新しいところは、各論にあり、そもそも年金制度の雛型が軍人恩給にあるとしたり、戦後は社会保険の主たる対象として源泉徴収制度の導入の帰結として男性稼ぎ主モデルが事実上推奨された結果サラリーマンであふれる社会になった、など、人の類型化・把握が意図せぬ帰結を生むことをつきとめた点にある。2026/11/02
O次郎
4
日本における福祉国家成立の歴史を辿ることで、なぜ福祉のあり方が選別主義的になっているのかや生活を保護をめぐる議論、行政における福祉相談サービスの問題点まで広く論じており、非常に面白かった。欧米における人種問題は日本においては在日外国人問題に当たるという指摘や「標準的な人」への福祉は捕捉的にも関わらず、そこから外れると申請主義になるのは起源が総力戦体制の構築にあるからなどはじめて得る視座も多かった。著者は韓国出身とのことで、あとがきに書かれたエピソードからは現代日本における福祉の問題がよく伝わってきた2026/10/24
NorthVillageHRE
3
これはめちゃくちゃ面白い1冊!「福祉国家」のイメージが変わった/日本の社会保障は戦前の社会保険が下敷きで、福祉国家は権利概念なしでも成立しうる。本書はその鍵を官僚制の論理に支えられた国家権力に見る/官僚制は世の中を人工的に分割・分類する権力であり、文書を扱える専門家と非専門家の間に非対称な力関係を生む/福祉国家は普遍的な「安全網」ではなく、国家が特定の集団を掌握する「掌握網」。抜け落ちる人がいてもよく、典型的な集団像にレッテルを貼る。国家のニーズ次第なので納税者などの把握は進み、貧民救済などの網の目は粗い2026/10/31
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