岩波新書<br> 中上健次―路地のビジョン

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岩波新書
中上健次―路地のビジョン

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  • サイズ 新書判/ページ数 254p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784004321170
  • NDC分類 910.268
  • Cコード C0295

出版社内容情報

戦後生まれで初の芥川賞作家となった中上健次(一九四六―九二)。「戦後」と「現代」の狭間を生きた中上は、高度経済成長のもとで(再)開発によって失われゆく路地を執拗に描き続けた。その作品群は変革とレジスタンスへのたゆまぬ意志で満ち溢れている。類まれな想像力で仮設された虚構の時空への、最良の道案内。


【目次】

 はじめに

第1章 同人雑誌から商業作家へ
 1 文芸部と同人雑誌
 2 詩人中上健次
 3 少年小説、自伝的小説
 4 佐藤春夫と中上健次
 5 見えない地図を描き出す

第2章 戦後生まれの「戦後文学」
 1 「戦後」を描く
 2 「狂気」という「正気」
 3 戦争は終わっていない
 4 路地の家族物語
 5 「戦後」をめぐる想像力を拡張する
 6 交通と変容の動的な空間

第3章 (反)物語/差別論と「ことの葉」の記憶の旅
 1 紀州熊野の半島へ
 2 司馬?太郎と中上健次
 3 街道の被差別部落
 4 「思想の劇」
 5 (反)物語/差別論
 6 ことの葉(言の葉・事の葉)の記憶の旅へ

第4章 路地の親族関係とクィア家族
 1 路地の「民族誌」
 2 非規範的でクィアな親族関係
 3 レヴィ=ストロースと中上健次
 4 交換・ジェンダー・天皇
 5 「葺き籠り」の性治論
 6 近親姦・近親婚
 7 非規範的な親密関係を開く

第5章 路地というコモンズ
 1 路地のビジョン
 2 路地というゾミア
 3 「インディアン」と路地
 4 共有地と「公共性」
 5 裏山の御堂
 6 路地の「治癒神」

第6章 「仮設」と雑草、路地跡の希望
 1 隙間的な時間と空間
 2 「仮設」と雑草
 3 樹木と雑草、草の葉とことの葉
 4 雑草的な群れの「力」
 5 熊野と不知火
 6 生き延びるための物語
 7 負の男らしさ
 8 雑草の火、希望の火

第7章 「女物語」と「メロドラマ的想像力」
 1 物語批判から「メロドラマ的想像力」へ
 2 国民的記憶と『鳳仙花』
 3 「美徳」への反逆
 4 シスターフッドとその分断
 5 中上健次と梁石日
 6 「同化」と「排除」の彼方へ

第8章 異族たちの世界と「アジア」
 1 世界・「アジア」・路地
 2 無限のエコー、吉増剛造と中上健次
 3 未完の遺作
 4 「天皇小説」と「体制翼賛型少数者」
 5 「アジア的想像力」と未聞の言語

第9章 生類たちの世界、「内戦」の「戦後文学」
 1 喪の言葉
 2 路地の魔術的リアリズム
 3 縁起の世界
 4 「武人」と治癒神、植物と光
 5 喰う喰われる魚たち
 6 路地の戦争

 参照文献
 中上健次略年表
 あとがき

内容説明

戦後生まれで初めての芥川賞作家となった中上健次(一九四六―九二)。「戦後」と「現代」の狭間を生きた中上は、高度経済成長のもとで(再)開発によって失われゆく路地を執拗に描き続けた。その作品群は変革とレジスタンスへのたゆまぬ意志で満ち溢れている。類まれな想像力で仮設された虚構の時空への、最良の道案内。

目次

第1章 同人雑誌から商業作家へ
第2章 戦後生まれの「戦後文学」
第3章 (反)物語/差別論と「ことの葉」の記憶の旅
第4章 路地の親族関係とクィア家族
第5章 路地というコモンズ
第6章 「仮設」と雑草、路地跡の希望
第7章 「女物語」と「メロドラマ的想像力」
第8章 異族たちの世界と「アジア」
第9章 生類たちの世界、「内戦」の「戦後文学」

著者等紹介

渡邊英理[ワタナベエリ]
熊本県生まれ、鹿児島県育ち。東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得後満期退学。博士(学術、東京大学)。現在―大阪大学大学院人文学研究科教授。専攻―日本語文学、批評、思想文学論。著書―『中上健次論』(インスクリプト、第14回表象文化論学会賞)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

パトラッシュ

132
中上健次は正直あまり読んでいない。文章も物語も登場人物もクセが強すぎて、気力体力を消耗するのだ。何より中心テーマである「路地」とは無縁であったため、わかった気になっていいのか迷っていた。そんな中上文学を本書では、日本という国に内在する別個の共同体との闘争という視点から読み解こうとする。同じ言語と制度を用いながら差別にさらされ、忠誠を誓う事実上の国家を構築してきた。いわば欧州のユダヤ人やアメリカの黒人やイタリア人、在日朝鮮人や外国人移民と同じであり、中上作品を同化を強制する権力への反発と抗争のドラマと見る。2026/08/01

nonpono

72
二十代、熊野古道を熊野を歩いた。あの風土を空気を感じ、中上健次を読み始める。面白いし、圧倒されるが、たぶん半分は噛み砕けてない。だが、知った路地の世界。被差別部落、母型家族、今まで未知な世界。はまった。その才能に言葉に世界へ。中上健次の話で大好きなのは、空港勤務時代。人気ものな中上健次はなかなか小説を書く時間もない。だから空港のトイレでひたすら書いたお話。しびれた。人間、書こうと思ったら、どこでも書けるんだ。あの中上健次の丸っこい小さな字を思い出す。46歳での早逝、惜しい。本書を読みまた熊野の空が見たい。2026/10/02

Vakira

58
「路地はそこから、極小であっても千年王国として、熊野と拮抗し、日本と拮抗したのである」 中上健次と言ったらもう、これですよ、コレ。さて、この本、渡邊英理さんによる中上文学案内本。「路地とは中上健次が紡ぎあげた、ことの葉の記憶が降り積もる名所である」By英里。ことの葉とは「文字という言葉」。ここでの路地とは被差別部落。遥か昔の紀州、熊野には穢多・非人と言った賤民の部落があったのだ。明治維新と共に賤民制度は廃止され新平民となったが、昭和の中旬迄被差別部落は存在していた。中上さんはそんな地区で生まれ育つ。2026/07/05

ぐうぐう

33
中上健次の、あくまで作品を通してその生涯を追う。中上の小説と言えば「路地」となるわけだが、渡邊英理は「中上文学の路地とは、差別を被る空間であり、ゆえに(再)開発される空間だ」と冒頭で述べている。路地に閉じるのではなく、(再)開発という現実を直視したからこそ、中上の文学はアジアから世界へとその視座を広め、深めることができた、その過程が本書を読むとよく理解できる。未完となった『異族』もフォローしつつ、路地からアジア・世界へという展開でいうならば、(つづく)2026/07/27

yuki

14
最近になって「中上健次」をもう少し読もうと思い手に。なかなかむつかしかったのですが、中上健次と石牟礼道子、佐藤春夫、梁石日といった人たちとのかかわりが書かれていて新しい発見でした。朝から暑くて通勤も大変!で、本が読めません…。2026/07/24

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