出版社内容情報
敗戦直後、GHQ占領下に開所したスガモプリズン。外の世界が大きく移り変わるなか、戦犯たちは獄中で何を思い、何を見つめていたのか。戦争裁判の実態、刑務所管理の構造、戦犯の自治や言論活動、そして朝鮮人・台湾人戦犯の問題。十数年に及ぶスガモ運営の全体像を描き、塀の向こうに置きざりにされた戦争責任を問い直す。
【目次】
序 章 「大東亜共栄圏」の八・一五
アジアは東京時間で動いていた
焼け跡に開いた落下傘の花
捕虜引揚げの完了
三木清の獄死
「自由戦士」、歓迎される
「敗戦責任」をめぐる政争
「戦争犯罪人を処罰せよ!」
勝利者への卑屈な追従か
第一章 スガモプリズンの開所――逮捕と裁判
1 占領下の追及
戦犯容疑者の逮捕開始
「大物」たちの待遇
東京拘置所からスガモプリズンへ
逮捕の現場
恩給などの差止め
2 極東国際軍事裁判とBC級戦犯裁判
戦争裁判に向けた機構改革
東京裁判
アジア各地のBC級裁判
横浜法廷
次々に下る死刑判決
捕虜虐待への厳罰
多発した戦争法規違反
東京裁判の判決
3 戦犯の仮出所
減刑と仮出所の取り組み
遅れた「引揚げ」
仮出所の開始
第二章 塀の中の「自治」と「自主活動」
1 スガモの学園と新聞
重労働にあえぐ戦犯たち
自主活動と「スガモ学園」開校
『すがも新聞』の発行
どこまで書けるのか
2 主張する戦犯たち
日本人刑務官の管理へ
“ノーモア・スガモ”
タブーに触れる
「講和」への期待
初めての抵抗
3 真の「釈放」とは
心の糧としての文化活動
スガモのキリスト者たち
『信友』の創刊
釈放をめぐる葛藤や議論
「虚脱の空気」
第三章 受刑者たちの内なる声
1 平和条約と主権回復
調印の日が来た
「国内法上の刑ではない」
戦犯家族の援護
A級戦犯の出所、残されたBC級戦犯
2 巣鴨が問いかけるもの
自らの手で解明する
集められた刑死者の遺書
『世紀の遺書』の反響
死の受け止め方
巣鴨をゆさぶった一つの投稿
顕在化した思想対立
スガモ詣で
3 戦争責任のゆくえ
戦犯は犠牲者か
言論による活動
手記集の出版あいつぐ
無関心の壁をうち破れ
「彼ら」の眼を直視する
呼応する知識人たち
『私は貝になりたい』の衝撃
全棟大会の要求
「鉄鎖の身を平和のために」
第四章 プリズンの「異邦人」――植民地支配と戦争裁判
1 日本人ではない日本の戦犯
「大東亜共栄圏」からスガモへ
捕虜収容所に配置された朝鮮人軍属
同人誌『郷愁』の刊行
2 占領下ジャワの朝鮮人軍属
少年も抑留
「不純分子」たちの反乱
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- 和書
- ファシストを演じた人びと