出版社内容情報
首吊りや斬首、内臓抉りに四つ裂き……国家は反逆者を残忍極まりない仕方で殺し続けてきた。その恐怖と悲惨さに彩られた歴史は、支配権力が神聖不可侵性を獲得していく物語でもあった。聖性と裏切りをめぐる西洋近代の血塗られた経験を読み解き、現代を生きる私たちが直視すべき国家の本質を描き出す。
内容説明
首吊りや斬首、内臓抉りに四つ裂き…国家は反逆者を残念極まりない仕方で殺し続けてきた。その恐怖と悲惨さに彩られた歴史は、支配権力が神聖不可侵性を獲得していく物語でもあった。聖性と裏切りをめぐる西洋近代の血塗られた経験を読み解き、現代を生きる私たちが直視すべき国家の本質を描き出す。
目次
序章 反逆罪という問題
第1章 反逆罪の起源
第2章 中世末期の反逆罪
第3章 反逆罪の拡張
第4章 反逆罪の転回
第5章 反逆罪と国民形成
終章 反逆罪と現代
著者等紹介
将基面貴巳[ショウギメンタカシ]
1967年生、慶應義塾大学法学部政治学科卒業、シェフィールド大学大学院歴史学博士課程修了(Ph.D.)。現在―オタゴ大学人文学部歴史学教授。専攻―政治思想史。著書―『ヨーロッパ政治思想の誕生』(名古屋大学出版会。サントリー学芸賞受賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
119
古代ローマ以来、国家とは統治者たる皇帝や国王の存在あればこそだった。その権力者を守るため反逆罪が生まれ、厳しく罰せられるのが当然とされてきた。しかし暴虐な王の打倒を正当化するため国家に対する反逆罪という考えが生じ、政治が貴族だけで行われていた時代は廃位と暗殺だったのが、清教徒革命とフランス革命での国王処刑で頂点に達する。人治から法治へ、個人への忠誠から国への忠誠へと国の体制が移行するのを、反逆罪の概念変化が支えたのだ。国家より自分への忠誠を要求する指導者が増えている今日、再び反逆罪は個人が対象になるのか。2025/01/11
skunk_c
66
著者は「愛国」の研究者であり、本書はそのテーマから避けられない「反逆」の歴史を、ルーツをローマとその後のゲルマンにとりながら、イギリスとフランスを題材にして詳述する。反逆の対象として「威光」とか「主権」とも訳されるマイェスタスという概念(英語のマジェスティに近い)という概念を取り上げ、当初は君主という人、または騎士道のような正義に反するものを反逆としていたが、徐々に社会が対象になっていく。その意味で君主を反逆者として処刑したピューリタン革命はまさに革命的だとか。そして現代に至ると民主社会では急速に衰える。2024/12/28
鯖
17
英仏中心に反逆罪の歴史を辿る。首吊りにし内臓引き出して火中に投じる罰は中世医学で反逆的思想は出生と共に内臓に宿るとされてたからとのこと。へんぱちに対し「アンと結婚するなら死ぬだろう」と告げたバートンは仮定に過ぎなかったのに私権剝奪法を適用され、英女性として唯一首を晒されたくだりは昨日の「チ。」のその時その場所において、権力者の裁量で局所的に地動説は迫害されていただけってのが思い浮かぶ。18世紀に入ると反逆罪に問われた者は内臓を取り出す前の首吊りの段階で死ぬように処刑人が対処し、残虐刑は形ばかりとなった。2025/02/23
どら猫さとっち
14
反逆罪。たとえした本人が正義であっても、権力者に逆らえば、容赦なく処刑される。それも残虐極まりないものばかりだ。支配権力が、神聖不可侵性を獲得していく物語。ヨーロッパ史を中心に、それまでの罪と罰の足跡をたどった歴史書。さすがに今はないと思うけど、そのうち起こることもあり得るかもしれない。ロシアのプーチン大統領、下手すればアメリカ大統領になるトランプも、いずれそんなことを起こしかねないと思うのは、杞憂であって欲しいけど。2025/01/10
青柳
8
英国と仏国の反逆罪を比較しながら、反逆罪がどのように適用され、時代に応じ変遷したのかを解説しています。本書のキーワードはマイェスタス(威光)であり、時のマイェスタスの占有者によって反逆罪の対象(者)が変わる点に注目しました。日本における反逆罪も触れられていますが、終章で少し触れられる程度で、やや駆け足気味の解説の気がしました。中~後半からマイェスタスが国王から人民へと移行し、それまでの反逆罪から180度転回され、逆に人民が国王を反逆罪に処することも可能になったというのが面白かったです。2025/03/26
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