出版社内容情報
たとえば紀貫之によると伝えられている「高野切」は、書を学ぶ人の手本となる書である。この名品には書き間違いがあるといわれ続けてきたが、しかしそれは本当に誤字脱字なのか。著者は実作者の目をもって書と対話し、ひらがなという大河の最初の一滴にさかのぼる。「つながる」という本質に注目しながら、美の宇宙を読み解くこころみ
内容説明
ひらがなはすごい。ふだん使っている文字が違ってみえてくる。
目次
第一章 ひらがなへの道
第二章 女手の宇宙
第三章 散らし書きの美学
第四章 三色紙を味わう
第五章 葦手の書法
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
よっち
34
書家の実作者である著者の目をもって書と対話し、ひらがなの「つながる」という本質に注目しながら、必ずしも言われている誤りとは言えないその美を読み解くこころみ。名作と言われながらも多くの誤字脱字があると言われてきたひらがな歌を記した「寸松庵色紙」などの色紙や断簡。文字をどう読み書くのか、漢字・ひらがな・カタカナや王羲之から始まった書について振り返り、寸松庵色紙などで指摘されている脱字について考察をしつつ、色紙の書を形成する3つの力、三色紙の味わい方、葦出の書法などを紹介していて臨書に興味が出てくる一冊でした。2024/07/01
kameyomi
18
教えて頂いたが、私にはかなり難しく、しっかり理解出来たとはとうてい言えない。だが、ひらがな(女手)の宇宙の美しさを少し感じることが出来た。まず「分かち書き」「散らし書き」の考えを知り、「三色紙を味わう」項では、掛筆、掛字、見せ消ち(隠字)、伏字、重ね書き、返し書き等の技を学び、更には、半分文字で半分絵である、葦手という書体にも驚かされた。近年のスマホの絵文字での表現衝動が、おそらくこの葦手の歴史から来ているというところが興味深い。とにかく、ひらがなの奥深い美にうっとりさせられる一冊だった。教えて頂き感謝。2025/01/24
nagoyan
11
この本は、久しぶりに興奮した。私達が日常に接する「ひらがな」とは、全く異なると言っていい「女手」。一字一語の漢字とは異なり、女手は連続して書かれるていうことに、その本質がある。一字の一部を他の一字と兼ねる掛筆に始まり、字そのものを掛ける掛字と進み、掛けることは隠すことにつながり、隠すことは、加えることにつながる。紙面の配置も意識し、散らし、分かつ。更には、返る。女手に磨かれた美意識は、他の書体にも及ぶ。そして、私達の今日の美意識にも、それは連続している。日本人を知ることに、深くつながっている。2024/06/21
広瀬研究会
8
筆でひらがなを書く時、必然的に前の字の最終筆が次の字の第一筆につながろうとし、そこにひらがなの修辞法や表現的技巧が生まれる。そういう目で「高野切」や「寸松庵色紙」といった仮名の名筆を見ると、従来、脱字や書き誤りとされてきた箇所も、そうではないということがわかる、という。むしろそれこそが仮名の表現の美学なんである、とも。うーんこういう展開好きだな。。。今までこんなに中世の仮名文字を読む努力をしたことがなかった。おかけで「可」から派生した「う」みたいな「か」にも随分慣れました。2024/09/01
skr-shower
6
他地区図書館本。全く読みやすくはない。万葉仮名がひらがなに対していくつもある・手本として残る散らし書きの作品に誤字?脱漏?写し間違い?がある、などの不自然疑問に答える説。平安貴族で若のやり取りをする・作品として残せる、なんて有能な人なのだから、今の鑑賞はほとんど読み込めてないのかも…ミステリ作品のようだった。2024/10/05
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