出版社内容情報
「窮境を自分に乗り超えさせてくれる「親密な手紙」を、確かに書物にこそ見出して来たのだった」。渡辺一夫、サイード、武満徹、オーデン、井上ひさしなどを思い出とともに語る魅力的な読書案内。自身の作品とともに日常の様々なできごとを描き、初めて大江作品に出会う人への誘いにもなっている。『図書』好評連載。
内容説明
「窮境を自分に乗り超えさせてくれる「親密な手紙」を、確かに書物にこそ見出して来たのだった」。渡辺一夫、サイード、井上ひさし、オーデンなどを語る魅力的な読書案内。自身の作品とともに日常の様々なできごとを描き、初めて大江作品に出会う人への誘いにもなっている。『図書』好評連載を収録した、未来に向けての一冊。
目次
1章(不思議な少年;困難な時のための ほか)
2章(バロックのブクブク;愛をとりあげられない ほか)
3章(様ざまな影響;茫然たる自分の肖像 ほか)
4章(不確かな物語;もぐらが頭を出す ほか)
著者等紹介
大江健三郎[オオエケンザブロウ]
1935年愛媛県生まれ。東京大学文学部仏文科卒業。58年『飼育』で芥川賞受賞。『万延元年のフットボール』(谷崎潤一郎賞)、『「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち』(読売文学賞)など受賞多数。1994年にノーベル文学賞受賞。2004年、井上ひさし氏、加藤周一氏らとともに「九条の会」の呼びかけ人になる。2023年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kinkin
75
短いエピソードだが読み終えて、内容のレベルの高さに撃沈・・・・大江作品も読んだことがないし、文学のこともすっからかんにわからない私は恥ずかしい思い。読み直してみたい。図書館本2024/03/05
kaoru
73
『図書』に2010~13年まで連載された「親密な手紙」をまとめた一冊。武満徹、義兄の伊丹十三、大岡昇平、恩師渡辺一夫、安部公房、E.サイードとの様々な交流が語られるかと思えば郷里の村のノリウツギが咲く山の斜面がゴルフ場建設のため削られたエピソードが登場する。グローヴ・プレス社の社主バーニー・ロセットが大江氏の英訳出版を後押ししてくれたことや東大の同級生で後にサルトルの研究家となった海老坂武氏の逸話も興味深い。そして大江氏の人生をある意味では決定づけた長男の光さんの存在。静謐な音楽のようにこちらの心に→2023/10/27
スプーン
36
自然体の、特異たる文体に表れる知性。 知性が静寂と豊かさ、深さを伴う事を教へられた。2024/05/14
梶
33
人生において、入り込んでしまう窮境を、そのたび乗り越えさせてくれる「親密な手紙」。サイード、渡辺一夫をはじめ、作家仲間、友人、母、息子、妻まで、さまざまな人物が登場するエッセイだが、全体をつらぬく静謐さ、深さは、晩年の仕事にとりかかった大江の老境ならではであろう。2024/02/29
くまさん
29
「きみが今も持っている大切な本で、買った日付が一番古いものは何?」少し思い出すのに時間はかかるけれども、この文庫です、と答えられる。手紙は現在の読み手に宛てられている。著者の本と勉強と家族とをめぐる回想、狂気や希望や晩年についての言葉が、窮境に陥りそうになる自分を鼓舞してくれる。まずは読むことに徹すること、そしてしっかり生きましょう!と。「「狂気」によつてなされた事業は、必ず荒廃と犠牲を伴います」(渡辺一夫)。座右の言葉としたい。2024/03/09