出版社内容情報
俳諧の本分は、たわむれ、滑稽にある。蕉風の確立のもとで、俳聖と称された芭蕉もまた、言葉の力によって、人びとに笑いをもたらすことに苦闘した俳諧師であった。青年期から晩年に至る様々な発句を読み解きながら、「しゃれ」「もじり」「なりきり」などの技法に込められた、芭蕉俳諧の〈あそび〉の精神とその魅力に迫る。
内容説明
俳諧は“笑いの文学”である。俳諧師の芭蕉はいつも、言葉を自在にあやつって、仲間たちや読者たちを“笑い”でもてなそうとしていた。彼の発句の数々を取り上げ、当時人気の古典文学や謡曲をふまえたパロディを確認し、「しゃれ」「もじり」「なぞ」などの技法を分析して、“あそび”の視点から芭蕉俳諧の魅力を再発見する。
目次
序章 いまこそ「芭蕉へ帰れ」―見失われた俳諧性
第1章 「しゃれ」―掛詞・付合語のあそび
第2章 パロディ―古典の世界にあそぶ
第3章 「もじり」から「なりきり」へ―謡曲であそぶ
第4章 「なぞ」―頭をひねらせるあそび
第5章 蛙はなぜ飛びこんだか―「古池」句のあそび
終章 「芭蕉」の未来
著者等紹介
深沢眞二[フカサワシンジ]
1960年山梨県生まれ。1988年京都大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。文学博士(2005年、京都大学)。日本中世・近世文学、連歌俳諧研究専攻。元和光大学教授。東洋文庫研究員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kana
23
「古池や蛙飛びこむ水の音」ってあるじゃないですか、侘び寂びに情趣を見出す芭蕉の俳句の代表的な一句といわれているあれ。それが実は過去の名歌に因んだユーモアに富んだ一句だったのに、晩年の芭蕉のスタイルにあわせて本人承認のもと再解釈されていた!?っていう信憑性高めの仮説に驚愕する一冊。当時の和歌って現代の私たちとは違う常識や教養をベースに生きる人々のTwitter大喜利みたいな世界なのかな。俳諧的お笑いってどんなだったのか垣間見れて終始内容は面白いのですが、それを説明する文章がとにかく読みづらいのが玉に瑕です。2023/06/05
nnnともろー
4
俳聖と呼ばれ、真面目なイメージのある芭蕉。本来は俳諧師。もっと滑稽味あふれる魅力があったはず。「古池や〜」の句にも俳諧特有の「なぞ」が仕掛けられていた。なるほど!2023/04/15
白石佳和
2
芭蕉の新たな価値を見出した貴重な本。芭蕉といえば、わびさびや軽みなど、芭蕉後期の価値観を中心に語ることが多いが、この書では、談林・宗因などの俳諧の流れを汲んでいる点に焦点を当て、言葉遊び的な要素によって新解釈を示す。その解釈はとても説得力があった。このような点はこれまで誰も指摘していない。芭蕉研究の新たな地平を拓く主張である。2023/01/13
隠居
1
お水取りの句、鑑真の句、古池の句の解釈、痛快の一言。2023/01/10
紅林 健志
0
芭蕉の発句を〈笑い〉をキーワードに読み解く。発句「たこつぼやはかなき夢を夏の月」の解釈がおもしろかった。ただ、当初の意図は〈笑い〉であっても後に別の解釈を芭蕉が許容する例もあるので、解釈は状況によって違ってくるわけで、そこの扱いが難しい。2024/03/05