出版社内容情報
自然観、無限と有限、対立と融合、自と他。さらには教育理念、国家観。そして生と死……。弘法大師・空海の先駆的な思想を、密教研究の第一人者で、みずからも高野山に暮らす著者が、空海の書き記した多くの書物、手紙などをもとに多角的に解き明かす。ロングセラー『密教』『高野山』に続く、第三弾
内容説明
自然観、無限と有限、対立と融合、自と他。さらには教育理念、そして生死観…。弘法大師・空海の先駆的な思想を、そしていま改めて必要とされる考えを、密教研究の第一人者で、高野山に暮らす著者が、空海の残した多くの書物、手紙などをもとに、多角的に解き明かす。ロングセラー『密教』『高野山』に続く、第三弾。
目次
1 果てしない宇宙と有限世界
2 自然観
3 対立と融合
4 自と他
5 読み替え
6 仏陀の説法
7 教育理念
8 国家と民衆
9 生死観
10 入定信仰
著者等紹介
松長有慶[マツナガユウケイ]
1929年和歌山県高野山に生まれる。1959年東北大学大学院文学研究科印度学仏教史学科博士課程修了、文学博士(九州大学)。高野山大学教授、同学長、大本山宝寿院門主、高野山真言宗管長を経て、高野山大学名誉教授、補陀洛院前官(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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KAZOO
96
空海がどのように自分の考えを確立していったのかをわかりやすく説いてくれています。著者は高野山大学の学長をされた方で教え方も非常に上手だと感じました。この著者のほかに「密教」「高野山」という本がありますが、この本では空海の著書などの引用もしつつインド仏教哲学との関連なども書かれています。空海の入門書としては少し難しいのでしょうが手ごろな1冊であると思います。2022/08/14
ゴールドまであと942日
87
弘法大師の解説本、どうしても数多く出版されて、その種類の本を結構な数で読んでいる。印象が薄くなる。定説があり、資料が残っていること以外は、あまり書けない。一般的な紹介本になる。あまりに古い、1250年とかなると、実際、いたには違いないとはいえ、その事跡には、伝説や誇張も多いことだろう。たとえば、四国遍路88カ所、とてもあの偉大な僧侶だとしても、四国山中にお寺の始めを作っていくのは困難である。いろいろなことが、空海という大きなものをつくりあげていったのだろう。それでいいけど。我が国のスーパースター。2024/08/15
崩紫サロメ
27
著者は高野山で生まれ、高野山大学で密教を学び、高野山大学教授・高野山真言宗管長をつとめた人物。故に自分が想定していたような外側から俯瞰するような空海像ではなく、高野山の”内側”から感じ取った空海の息遣いが感じられるような描写である。密教の考え方の基盤には、存在するすべての者は何らかの欠点を持つと共に、たとえわずかであっても他者が持たない長所を必ず備えもつという見解があるとする(p.73)異教徒を包み込み、自己の領域内にその居場所を与えるというあり方(p.75)など、興味深い点であった。2022/09/28
まえぞう
16
空海という表題を見るとついつい手が出てしまいます。どうも、密教、高野山という前2作に続く三部作だそうで、そちらも読んでみます。2022/07/23
カーリアン
10
元高野山大学学長による、空海の思想を論じた本。仏教の「欲望を抑えて、足るを知れ」とは言わず「欲望は生きる原動力だから、ブレーキをかけずに行動しなさい」が密教思想らしい。これには驚いた。もちろん、生々しい欲望はいけないが、質素ではなく大胆に行けと僕は解釈した。ドイツ小説「シッダールタ」より、「私はなにももたないけれど、私は考えることができます。私は待つことができます。私は断食することができます」について、筆者はこの特性が現代の社会に最も欠けたものだという。とても丁寧な解説で空海の思想に共感すること大でした。2023/11/11