出版社内容情報
難解とされる西田幾多郎の思想の本質は、「自覚」の哲学である。この見地から、初期から晩期までの独自の様々な鍵概念「純粋経験」「自覚」「絶対無の場所」「絶対矛盾的自己同一」に沿って、「悪戦苦闘のドキュメント」と評された西田の思索の内的運動と展開の軌跡を明確に解読する。西田哲学への最良の道案内。
内容説明
西田幾多郎の哲学の根底には、つねに「自己が自己を見る」という「自覚」の考えがあり、それが「純粋経験」「絶対自由意志」「絶対無の場所」「絶対矛盾的自己同一」の思想や論理として展開されている。西田哲学の形成過程を「自己」の自覚から「世界」の自覚に至る自覚自身の深化と転回の過程として明確に説き明かす。
目次
序論 自覚の哲学としての西田哲学
第1章 純粋経験―真実在の世界
第2章 自覚―見るものと見られるもの
第3章 場所―包むものと包まれるもの
第4章 絶対無の自覚―宗教的境位
第5章 絶対矛盾的自己同一―自己の自覚から世界の自覚へ
第6章 逆対応―自己と超越者
著者等紹介
小坂国継[コサカクニツグ]
1943年、中国張家口生まれ。1971年、早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得満期退学。博士(文学・早稲田大学)。日本大学名誉教授。『新版 西田幾多郎全集』(全24巻、岩波書店)編集委員。専攻―宗教哲学・近代日本哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mark
19
有名な名著だが、大変に難解な『善の研究』などを繙き、西田の哲学研究の足跡をたどっています。平易な解説書かと思って読み進めてみましたが、自分のような浅学な輩には全く歯が立たないどころか、ほぼ初めて接する外国語で書かれた文章のように、単語の上をただ視線が滑るだけになってしまい、西田哲学を理解するどころか、自分の無学さを痛感させられる結果になってしまいました。情けないです。出直します・・・2022/06/10
りっとう ゆき
5
難しかったけど、たぶん、宇宙(神?大日如来みたいな?)と個は一体、個は宇宙の派生(逆方向も)、という梵我一如のイメージが根底にあって、そこから考えるとわかりやすい気がした。純粋経験(動物的な?)→「純粋経験をしてる自己を意識」まではわかるけど、絶対自由意志、絶対無っていうのはちょっとイメージできないが涅槃みたいな?反省できない自覚できないって壮大すぎる。ふと思い出したのは、夏目漱石の「行人」のお兄ちゃんの苦悩だった。彼は純粋意識を望んでたのかと思ってたけど、もしかしたら逆方向の絶対無を望んでたのかも。2022/08/27
oooともろー
3
西田幾多郎の哲学を俯瞰する入門書は珍しいか?分かりやすいがそもそも西田幾多郎の哲学が分かりにくい。西欧近代哲学への批判。実践的ではないのが弱点?2022/12/15
artgrape
2
世界をひとつの概念(原理)で説明したい、それが西田の目指すところだったとよく分かる。本書は平易な解説になっており、西田哲学に興味のある人には入り口としておすすめ。初めはとっつきにくくても、辛抱強く読み進めていけば、突然「分かる」ときがくる。「分かる」と世界が新しく見える。個人的に感じたのは西田がスピノザの影響をかなり受けているのではないか、ということ。だからドゥルーズとも親和性がありそう。スピノザ、もっと研究されるべき哲学者なんだろうなぁと思う。2023/08/10
KJ
1
禅がルーツだからかチクセントミハイのフロー理論に近いものを感じる/ひたすら個人の心を掘り下げて絶対無に至る過程は、顕微鏡で見る景色が宇宙と似ているというイメージに重なる/『日本文化の問題』面白そう。特に、無だからこそ創造に繋がるという点からは色々なことを捉え返せそう/著者の指摘の通り、文化についての説明はできても政治や社会の基盤になる理論とは感じられず、むしろ「ゾーンに入れれば何でもいい」危うさがある?