出版社内容情報
老子の「道」の思想を起点に、古代神仙思想、後漢末の太平道と五斗米道、六朝知識人の修養法など、さまざまな思想・運動をとりこみながら形成された道教。その哲学と教理を、「気」の生命観、宇宙論、救済思想、倫理・社会思想、仏教との関わり、日本への影響などの論点からとらえる。丁寧なテキスト読解に基づく総合的入門書。
内容説明
老子の「道」の思想を起点に、古代神仙思想、後漢末の太平道と五斗米道、六朝知識人の修養法など、さまざまな思想・運動をとりこみながら形成された道教。その哲学と教理を、「気」の生命観、宇宙論、救済思想、倫理・社会思想、仏教との関わり、日本への影響などの論点からとらえる。丁寧なテキスト読解に基づく総合的入門書。
目次
第1講 道教の始まりと展開
第2講 「道」の思想―通奏低音としての『老子』
第3講 生命観―気、こころ、からだ
第4講 宇宙論―目に見える世界を超えて
第5講 神格と救済思想―自己救済から他者救済へ
第6講 修養論―内丹への道
第7講 倫理と社会思想―政治哲学としての道教
第8講 道教と仏教―三教並存社会のなかで
第9講 道教と文学・芸術
第10講 道教と日本文化
著者等紹介
神塚淑子[カミツカヨシコ]
1953年兵庫県生まれ。1979年、東京大学大学院人文科学研究科博士課程中途退学。博士(文学)。専門は中国思想史。現在、名古屋大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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崩紫サロメ
22
とてもわかりやすい道教入門書。第1講で「道教の始まりと展開」を概観し、その後の講で世界観を描いていく。死生観、救済に対する認識などを解説していく中で、道教の子爵用・祖先済度のあり方が仏教思想と中国的思惟の融合に成り立っているという指摘(p.105),また道教が隆盛を極めた唐代において、国家統治の理念が儒教思想との融合が顕著になっていることへの指摘(p.152)など、興味深い。道教と文学・芸術、日本文化への影響などもそれぞれの講が設けてあり、巻末の参考文献も充実している。2020/11/20
かふ
20
岩波の10講シリーズは入門書というより専門書に近い。素人にはいらない知識ばかり書かれていた。ただ「道教」が『老子』や『莊子』だけじゃなく、鍛錬法や神仙思想につながっていて、中国の根本思想を形作っていることが良くわかった。日本の神道の根源には「道教」がある。神仙思想は、仙人の世界。それは『ドラゴンボール』の世界だった。「気」が「元気」になってパワーになる。天界も仏教より多く「三十六天説」。階層になっていて各階に王がいる。このへんは桃源郷のようなユートピア思想にもなってきて小野不由美『十二国記』の世界観。2022/03/20
yamahiko
13
本書の趣旨ではありませんが、宗教の持つ根源性と特性だけでなく、どうしてもそれらに纏らってしまういかがわしさの理由を考えながら読みました。 本書自体は、道教の成り立ち、発展の経緯と広がり、属性が余すことなく、限られたページ内に学術的に網羅されてあり面白く読めました。2020/11/08
はちめ
11
道教は中国の唐の時代に盛んになり多くの経典が輸入され、当時の知識人たちが読んで影響を受けたにも関わらず、日本には道教の寺院や道士は導入されなかった。吉備真備が断ったという逸話もあるらしい。もちろん山岳信仰などには大きな影響を与え、日常生活にもそれらが及んでいる部分はあっても、日本人がそれを道教として意識することはない。興味深い問題だと思う。☆☆☆☆★2020/10/13
coldsurgeon
6
中国での三大宗教の一つとして挙げられる道教は、日本に伝えられた儒教・仏教と共に、日本文化にどのような影響を及ぼしていたかが気になっており、本書を手に取った。正直、難しかった。老子にある「天網恢恢疎にして漏らさず」の文章は有名だが、そのような老子、荘子にある言葉が、日本に入り込み、いつの間にか、民間信仰のような形で伝えられている。そして、道教そのものは、仏教から多くのものを受容しつつ、宗教として形を整えてきたことが理解できた。しかし道教思想は、曖昧物個のままだ。2024/08/08