出版社内容情報
一八世紀に突如起こった人口の爆発的増加は、中国を知るための鍵である。それはなぜ、どのように起き、今まで続いてきたのか。文明の始源からの歴史がもたらしたさまざまな条件と、大変化のメカニズムを明らかにし、現在、そして未来までも人口史から読み解く。ヒトの生態を羅針盤にゆく、中国四千年のタイム・トラベル。
内容説明
一八世紀に突如始まり、現代にまで続く人口増加は、中国の今を読み解く鍵である。二千年の間、人民はどのように把握され、記録されてきたのか。長くゆらいでいた人口は、なぜ急増したのか。大きな変容の要因を自然と歴史に探り、人口爆発のメカニズムを明らかにする。ヒトの生態史を文明のはじまりから描く、斬新な通史。
目次
序章 人口史に何を聴くのか
第1章 人口史の始まり―先史時代から紀元後二世紀まで
第2章 人口のうねり―二世紀から一四世紀前半まで
第3章 人口統計の転換―一四世紀後半から一八世紀まで
第4章 人口急増の始まり―一八世紀
第5章 人口爆発はなぜ起きたのか―歴史人口学的な視点から
第6章 人口と叛乱―一九世紀
終章 現代中国人口史のための序章
著者等紹介
上田信[ウエダマコト]
1957年生まれ。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了。現在、立教大学文学部教授。専攻、中国社会史、アジア社会論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サアベドラ
35
中国人口史の概説書のような題名と体裁だが、実際のメインは18世紀以降に清朝で起きた漢民族の人口爆発で、その原因を社会的、経済的観点から論じている。2020年刊。著者の専門は中国近代社会史。官僚制度が高度に発達した中国といえども前近代に政府が人口を把握することは困難だった(そもそも戸口単位で徴税していた時代には人民の正確な数字は不要だった)。また当然ながら戦乱期はデータが不足している。近代歴史学的手法による研究は端緒についたばかりで、人口を軸に中国史を論じるのはまだ難しいのかなといった印象を受けた。2021/01/05
kk
23
中国史の中での人口動態の意味合いなどを実証的に考えてみようとする試み。人口の増減傾向を分析するには男性の数はあまりが関係なく、女性の生育数が重要という指摘に驚いた。考えてみれば当たり前のことかもしれんけど。また、近世の人口増加傾向について、平均余命の延伸そのものなどよりも、女溺風習の克服や貨幣経済発達による端境期乗り切りの容易化などが大きな要因になっているといった主張に興味を惹かれた。男性人口過多が社会・政治情勢に及ぼし得るインパクトの考察にも感心した。ほんと、中国史ってのは一筋縄ではいかないですね。2021/09/29
崩紫サロメ
18
中国史の人口動態について合散離集というモデルを提示し(p.16)紀元前から現代に至るまでを分析する。中心となるのは著者の専門に近い18世紀で、この時期人口爆発が起こっているが、それは何故なのか、というところである。貨幣経済の浸透により農業を離れた生き方が可能になり、それが「溺女」の習慣を減らしていった、と分析。また、故郷を離れて働く男たちが太平天国の乱なのに関わっていく、と移動の歴史との関係指摘する。2020/10/15
C-biscuit
16
図書館でかりる。中国の人口からその歴史をみる本である。少し変わった本の印象。そもそも中国は最初から人数が多かったわけではない。爆発的に増え始めたのは、18世紀半ばごろから。結局のところは食料問題であったように思う。ジャガイモやコーンなどアメリカが原産の食糧が問題を解決している。また、中国は男子が好まれるため、溺女という悲しい風習もあったようである。今考えると怖い話であるが、時の皇帝が禁止するまで割と最近まであったようである。愛新覚羅の文字も久しぶりにみた。中国だけではなく人口から読み取れることは多い。2020/10/22
さとうしん
16
一応中国史の全時代を範囲としており、三国時代の前後に人口が急減しているのは、戦乱で本当にそれだけの人間が死んだわけではなく、王朝が把握できる人口が減ったということを示すというお馴染みのネタも盛り込まれているが、主な読み所は18世紀の人口爆発とそれ以後の展開。従来人頭税の廃止が人口爆発の理由とされていたのが、それは一時的なものにすぎないと、別の背景を模索していくが、そこで生態環境史や地域ごとの産業や移民の問題など、様々な視点が提示される。人口史からの話の広がりが面白い。2020/08/26