出版社内容情報
日本思想の膨大な集積のなかに、〈王権〉と〈神仏〉の二極構造を見出し、大胆な鳥瞰図を描き出す通史。
内容説明
古代から今にいたるまで、日本人はそれぞれの課題に真剣に取り組み、生き方を模索してきた。その軌跡と厖大な集積が日本の思想史をかたちづくっているのだ。“王権”と“神仏”を二極とする構造と大きな流れとをつかみ、日本思想史の見取り図を大胆に描き出す。混迷する現代を見据え、未来のために紡がれる、唯一無二の通史。
目次
日本思想史をどう捉えるか
1 思想の形成(古代)~9世紀(日本思想の形成―飛鳥・奈良・平安初期)
2 定着する思想(中世)10~15世紀(儀礼化する王権と神仏―摂関・院政期;王権と神仏の新秩序―鎌倉期;中世文化の成熟―南北朝・室町期)
3 思想の多様化と変容(近世)16~19世紀(大変動と再編―戦国・安土桃山期;安定社会の構築―江戸初期;思想の一斉開花―江戸中期 ほか)
4 世界の中の日本(近代)19~20世紀(日本的近代の形成―明治期;戦争と思想―大正・昭和前期;平和の理想と幻想―昭和後期 ほか)
著者等紹介
末木文美士[スエキフミヒコ]
1949年山梨県生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。現在、東京大学名誉教授、国際日本文化研究センター名誉教授。専攻、仏教学、日本思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
54
日本の歴史と思想を、超特急の駆け足でなぞった一冊。近世までの日本の思想が、「王権」と「神仏」という二つの極の関係を踏まえて展開されたことが、改めて実感される。更に、その背景に、中国との対比(冊封、易姓革命、日本型華夷主義など)があり、神・仏・儒の力関係が、時代に応じて変化していく様子が明らかにされる。末木先生らしく宗教的視点が中心だが、でも、この本には、「日本仏教史」の時のような多くの気付きを得た感動はなく、カタログを読むような上滑りした印象が残る。新書で「日本思想」の通史を示す限界かもしれない。2020/04/27
壱萬参仟縁
50
初心者は、同著者の角川書店から出ている『日本の思想をよむ』を先に読むのがよい。というのも、7頁の用語の読み方が書かれているから。ここでは敢えて書かないでおきます。調べる楽しみが本書には結構あるので。意外と日本人なのに学校でも教わらない人の名前が半分以上。人物を調べる意味も大きい一冊。読み方にルビが多数つけられているのは非常にありがたい。倫理の授業受けていないが、新書としてはかなりの専門性があると思う。2020/06/06
umeko
16
門外漢の私には、日本思想史を俯瞰でき、薄っぺらな知識の点ではあるがどのような流れの中の点なのかが掴めたところは面白かった。この本を足掛かりに掘り下げてみたい。2020/07/18
masabi
16
【概要】王権と神仏の二極から日本の通史を読み解く。【感想】日本史の知識が欠けているために初めて知ることばかりだった。王権と神仏の蜜月、対立と王権と神仏の距離感で日本史を描く。王権と神仏を包括する戦前の天皇制と後醍醐天皇が近しいなどおもしろい指摘があった。2020/02/11
浅香山三郎
15
日本思想史を神仏と王権、学芸と生活の2軸をベースに、王権の内実や仏教などの受容・思想的展開を加味しながら論じる。近代以降のところで、「キリスト教の受容と仏教界」(第10章)、「生命主義とオカルティズム」(第11章)などの観点があるのが、先に読んだ著者らの『死者と霊性』(岩波新書)の関心にも繫がつていく。論点は多岐に亘るが、日本の各時代の思索の位置を摑むにはよい本。2023/06/07