内容説明
その犠牲者は、一〇〇〇万人―四〇〇年にわたり大西洋上で繰り広げられた奴隷貿易の全貌が、歴史家たちの国境を越えた協力によって明らかになってきた。この「移動する監獄」で、奴隷はいかなる境遇に置かれたのか。奴隷貿易と奴隷制に立ちむかったのはどんな人たちか。闇に閉ざされた船底から、近代をとらえなおす。
目次
第1章 近代世界と奴隷貿易(奴隷制の世界史的意味―エリック・ウィリアムズの問い;奴隷貿易の歴史的起源 ほか)
第2章 奴隷船を動かした者たち(「移動する監獄」―奴隷船の構造と実態;奴隷となったアフリカ人たち―人身売買、中間航路、叛乱 ほか)
第3章 奴隷貿易廃止への道(サマーセット事件から始まる;アボリショニズムの展開―クウェイカー教徒とイギリス国教会福音主義派 ほか)
第4章 長き道のり―奴隷制廃止から現代へ(奴隷制廃止へ;奴隷から移民へ―一九世紀の人流大転換 ほか)
著者等紹介
布留川正博[フルガワマサヒロ]
1950年、奈良県生まれ。1973年、大阪大学基礎工学部卒業。民間企業勤務を経て、同志社大学大学院経済学研究科博士後期課程退学。同志社大学経済学部助手、専任講師、助教授を経て、同志社大学経済学部教授。専攻は大西洋奴隷貿易史、近代奴隷制史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
67
地球上で最大の交易品は人間だと聞いたことがある。難民や亡命者、出稼ぎに不法移民などの原点は、400年に及ぶ奴隷貿易にあることを明らかにする。どの国も安い労働力による資本の蓄積なしに産業発展はなかったが、欧州は奴隷による植民地開発でそれを行った。奴隷制で発展した植民地は独立後も捨てられず、廃止されるまで南北戦争を始め多くの内紛を経ねばならなかった。言及されていないが社会主義国の経済も、反対者を強制労働させることで基盤を築いた。その結果出来上がった格差社会で、21世紀も実質的な奴隷制は続く。人類史は奴隷史か。2020/12/11
樋口佳之
64
大西洋奴隷貿易は、利益を生みだすもっとも重要度の高い貿易の一つ/ウィリアムズ(「資本主義と奴隷制」)は「近代世界システム論」をかなり前に先取り/著者が参照しているTSTD1、2が公開されるのは今世紀初め。ヨーロッパ、アフリカ、両アメリカにとって大西洋奴隷貿易の持った意味は、今後いっそう明らかにされていくのでしょう。それは、例えば私が子どもの頃から教えられた世界史を書き換えていくことになるのだろうと思います。/ヨーロッパ各国、両アメリカの諸国、アフリカ各国の教科書で現在どう取り上げられているのかな。2022/02/15
skunk_c
54
エリック・ウィリアムズ『資本主義と奴隷制』(再読中)に始まり、ウォーラーステイン(R.I.P.)の世界システム論を俯瞰しながら、奴隷船と奴隷制度の歴史を追う。特に奴隷船の実態としばしば起きた奴隷船内の叛乱、奴隷制度の廃止と奴隷船の関係がよく分かった。また、特にイギリスの奴隷船・奴隷制廃止にクウェーカーなどの宗教的宗派が大きくかかわっていたことも重要か。少し物足りなかったのが、アメリカ南北戦争の戦略的な奴隷解放令に対し、イギリス(ヨーロッパ)が具体的にどんな反応を示したかが書かれていないこと。知りたかった。2019/09/05
Koichiro Minematsu
53
きっかけが浅はかでごめんなさい。新型コロナウィルス感染で大変なダイアモンド・プリンセス号。豪華客船が一転、私には奴隷船扱いのことのように見えて。本著を読んでみるとヨーロッパ国の南北アメリカ、アフリカ国への支配構造と思いきや、いや、そうなんですが、アフリカ社会の元々の奴隷制の影響もあり、極々一部でしょうが、飢饉から自らを守る自発奴隷もいたとのこと。問題が起きると個人責任が問われてしまう社会性も、本当の恐怖かも。2020/03/08
Toska
33
かつて一千万を超える黒人を大西洋の彼方に拉し去った奴隷貿易の歴史。国際的な研究で積み重ねられたデータを基礎とし、様々な角度から緻密に分析している。北米に送られた黒人は意外に少なく、カリブ〜南米(特にブラジル)の方が圧倒的に多いことは知らなかった。いずれもタバコや砂糖、コーヒーなど近代ヨーロッパ文明を支えた産品を奴隷の手で作らせるため。奴隷貿易反対派は砂糖の不買運動を展開しており、この構図は同時代人にも知られていたことになる。2026/04/10




