出版社内容情報
新たな社会問題に直面し福祉国家=帝国と化したアメリカ.冷戦が変化を迎える70年代までを描く.
内容説明
工業化と大衆社会化を迎えるなかで、格差や貧困といった新しい問題に直面した二〇世紀のアメリカは、ニューディールに象徴される社会的な福祉国家と変貌していく。しかしそれは同時に、二つの世界大戦を経て帝国化していく道でもあった。そしてベトナム戦争とニクソン・ショックにより冷戦が変化を迎える七〇年代までを描く。
目次
第1章 革新主義の時代
第2章 第一次世界大戦とアメリカの変容
第3章 新しい時代―一九二〇年代のアメリカ
第4章 ニューディールと第二次世界大戦
第5章 冷戦から「偉大な社会」へ
第6章 過度期としてのニクソン時代
著者等紹介
中野耕太郎[ナカノコウタロウ]
1967年生まれ。京都大学大学院文学研究科博士後期課程中途退学。博士(文学)。現在、大阪大学大学院文学研究科教授。専攻はアメリカ近現代史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
58
20世紀初頭からニクソンの退陣までの通史で、政治と外交を中心に手堅くまとめられている。基調となるのは福祉国家化と平等主義の拡大だが、理想主義的外交のウィルソンが人種主義的で、ニューディールを主導したF.ローズヴェルトも黒人差別については比較的冷淡だった。市民権(本書では公民権ではなくこちらを使用)運動はアイゼンハワーの時代に芽が出てケネディで開花する。しかし皮肉にもこの権利獲得が北部リベラルと南部という「ニューディール連合」を打破したという見方は新鮮。一方文化は弱い印象。特に禁酒法の話題は一言もなし。2019/11/07
サアベドラ
27
新書アメリカ史第3巻。2019年刊。1901年のT.ローズベルト就任から1974年のニクソン退陣までの歴史を外交と内政(特に人種・マイノリティ問題)の側面から描く。主な登場人物はホワイトハウスの住人と様々な運動の活動家達。大恐慌を挟んで両世界大戦、公民権運動にベトナム戦争とイベントてんこ盛りの時代だが、前の2冊に比べて政治の細かい流れを追う記述が多く、少々お堅い感じの新書になっている。社会文化史がかなりカットされていて時代の空気を感じにくいのがややマイナス。2019/12/23
ステビア
25
総力戦、福祉国家、ニューディール、帝国主義、その陰で抑圧されるマイノリティ2024/01/03
coolflat
24
20世紀アメリカの福祉国家=帝国の政治体制は、ジョンソン政権の「偉大な社会」を一つの到達点として70年代半ばまで存続する。この体制が急激に衰退していく背景には、ベトナム戦争に起因する財政難や石油危機、さらに市民権運動がもたらしたニューディール・民主党支持層の分裂など、多様な原因が指摘できる。本書は、このような20世紀アメリカの「社会的な」国民国家がいかにして形成されていったのか、そしてそれは同時に進行していたアメリカの帝国化とどのような関係があったのか、さらに人権問題がどう展開していったのかを追っている。2020/12/16
崩紫サロメ
21
本書のタイトルはこの時代を「アメリカ社会から貧困と不平等をなくし、世界の人々にも自由と豊かさを分け与えようとする奮闘」として描いたことよる(p.233)。この時期はアメリカの対外膨張の時期でもあり、帝国意識の形成期でもある。戦時動員などの過程で、アメリカ化や人種隔離など排除と包摂の社会規範が広く需要された。現在のアメリカが抱える問題を考える上で「20世紀アメリカの夢」が生み出した壮大な社会実験を肯定的に捉えることも、無視することも難しい、2020/09/01