出版社内容情報
世界のなりたち、存在と認識、物質と精神、業と因果、そして「言葉」。二千年以上にわたる思索の軌跡を、テキスト読解をふまえながら学ぶ。難解と思われがちなインド哲学のおもしろさと広がりをとらえる、刺激的な入門書。
内容説明
二千年以上にわたって重ねられてきたインドの思想的営みから、私たちは何を学ぶことができるのか。世界の成り立ち、存在と認識、物質と精神、業と因果、そして言葉それ自体についての深い思索の軌跡を、原典読解をふまえながら考察する。難解と思われがちなインド哲学のおもしろさと広がりをとらえる、刺激的な入門書。「10講」シリーズの哲学・思想編。
目次
第1講 インド哲学のはじまりと展開―ウッダーラカ・アールニの登場
第2講 存在と認識―新しい思想家たち
第3講 存在の根源―「一者」をめぐって
第4講 二元論の展開―サーンキヤ派
第5講 因果論と業論―世界を動かす原理
第6講 現象と存在―シャンカラの思想
第7講 生成と存在―「なる」と「ある」の哲学
第8講 言葉と存在―言葉はブラフマンである
第9講 存在と非存在―言葉と普遍
第10講 超越と存在―ヴァイシェーシカ派とニヤーヤ派
著者等紹介
赤松明彦[アカマツアキヒコ]
1953年、京都府生まれ。1983年、パリ第3(新ソルボンヌ)大学大学院博士課程修了。京都大学大学院文学研究科教授。専攻はインド哲学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
21
10講がインド哲学史の簡潔な紹介ではなく(第一講は「インド哲学のはじまりと展開」なのだが)、それぞれ西洋哲学に出てくる「存在と認識」「存在の根源」「二元論の展開」「因果論と業論」「現象と存在」「生成と存在」「言葉と存在」「存在と非存在」「超越と存在」と展開していく「一(神)者と存在論」でかなり奥が深い。よく整理されていると思うがそれでも行ったり来たり迷うこと必死で神を見失いそうになる。初期は秘伝だったわけで言葉にするだけで呪われていたりしたのだ。ジャイナ教とか仏教が出て構造改革が進み様々な解釈が出てくる。2020/01/19
koji
16
著者は、まず哲学的思考と神話的思考を定義します。哲学的思考のKeyWordは、普遍的原理、抽象的概念、論理的な思考、世界の成り立ちです。これを本書では、ヴェーダからウパニシャッドに至り、その伝統を保持した6つの学派、もう一つ文法学派をもとに説明します。「正しい生き方」は語らず、存在を問います。精緻な議論が展開され難解さはありますが、私なりの理解では、インドでは、存在においでも、常に神と業(カルマ、人が前世においてなした行為を後世で引き受けること)の問題がつきまとうことに特徴があります。深遠です。2019/01/06
cape
15
インドにある重層感は他の国では味わえない。混沌としたカオスのような中に、粉塵と共に漂う薫り。深い歴史と人間の営為の重なりが、文化となって現在の一地点をなしている。この不思議な国の成り立ちに、千年単位の神話的な哲学思想があることがわかる。根源一者ブラフマンから、存在と非存在、転変、言葉が問い直され、この世界のありかをこんなにも古くから議論していた事実。インド哲学10の講義は、内容自体は難解だが、一般向けに平易な解説に努めていて、なんとかついていける。深く考えさせる行間に、インドの薫りが漂う。2019/10/17
さえきかずひこ
15
インド哲学の存在論を主題とした入門書だが、内容はきわめて高度である。それぞれの記述がそうとう込み入っている上に、一講一講がかなり難解であり、初心者としては、ほとんど何を言っているのか分からなかった。ただし、自分の知っている仏教のものの考え方(たとえば色即是空)も仏教固有のものではなく、広くインドの様々な宗教・哲学からの影響を受けて形成されていることが理解できたのは良かった。初心者に対しては取り上げる教典の数を減らし、懇切丁寧に手を替え品を替え解説してほしい。むろん、インド哲学そのものが難解なのでしょうが。2018/11/10
佐倉
14
ブラフマーという不変の実体を想定したことで厳密に考えると諸々の矛盾が現れてしまう。それを解消しようとしたのがウパニシャッド哲学の過程だった…という理解で良いのだろうか。おそらく前提となるヴェーダやバラモン教のブラフマー観を共有しないとここで論じられていることを十全に理解できない気がした。“言葉による把捉”ゆえに現象界を虚妄としたシャンカラ、逆に言葉によって出来ているから言葉=ブラフマーとしたバルトリハリの話は難解ながら興味深かった。2024/01/16