出版社内容情報
若き日の行動やプロパガンダの手法等にもあらたな光をあてながら、歴史のなかの生涯を多角的に描きだす。
内容説明
時代に遅れていると同時に、時代に先駆けてもいた―歴史家は彼をこう評する。コルシカという周縁の地に生をうけ、革命の荒波を乗り切り、皇帝にまで登りつめたナポレオンとは、いかなる人間なのか。若き日の革命人士としての行動、エジプト遠征、プロパガンダ等のあらたな視点も盛り込み、歴史のなかの生涯を描きだす。
目次
第1章 コルシカ島
第2章 頭角
第3章 政権欲―第一次イタリア戦役
第4章 イスラームとの遭遇
第5章 敗残将軍が凱旋将軍となる
第6章 大陸の覇者
第7章 時代のはざまに生きる
第8章 暗転
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
coolflat
24
ナポレオンの軍事的・政治的才能は膨大な読書量によって育まれた事を知った。77頁。1798年エジプト遠征。ナポレオンは制海権をイギリスから奪えない現状ではイギリス上陸作戦は無謀だと総裁政府に訴え、遠征の目的地をエジプトに変えさせた。インド交易を妨害する事で、イギリスの経済力を弱体化させる事が目論まれていた。エジプト経由のインド交易からイギリスを締め出す事に加えて、喜望峰周りで紅海出入口の沖合を通過するイギリスのインド交易船を拿捕するために、スエズ運河と紅海沿岸にフランス海軍基地の建設が企図されたのである。2020/11/01
skunk_c
24
フランス近現代史の専門家による、極めて読みやすいナポレオンの評伝。著者自身が物語のような語り口を目指したとあるが、見事に成功している。同時に、史料吟味の面白さや、美術品や文学作品との関連など奥行きも深い。ただ、この時代について語り切れているかというと、やはりこのサイズでは難しかったよう。ナポレオン出現前のフランス革命史や、ウィーン会議の流れなどを、他書で当たるなどしないと、さすがに十分な理解は難しいかな。ともかくすらすら読めるのと、現代までを視野に入れた考察は、歴史を読み解く楽しさを味合せてくれる良書だ。2018/03/01
紙狸
17
2018年刊行。著者はフランス史の専門家。この新書ではナポレオンに関する「おもしろさが先立っている裏話や逸話」もとりあげつつ、学問的な史料批判の成果を紹介する。以下勉強になった点。ナポレオンが1800年以降の戦役で引き起こした人的被害は、敵味方合計約300万将兵の死亡だった。(この数の大きさは国民国家の軍隊が強力であることの裏返しだろう。)ナポレオンは「私的所有権の不可侵」の原則を欧州に広めた。ロシア戦役に乗り出した背景には、ロシアが、ナポレオンによる英国対策である大陸封鎖を守っていなかったことがあった。2025/05/05
ジュンジュン
14
新ナポレオン像の提示ではなく、オーソドックスな伝記。伝統と革新がせめぎ合う激動の時代。心身両面で若くイケイケな前半生と、衰え始め地位に固執する後半生の生涯。副題にはそんな二つの意味が込められているようだ。2021/01/02
ナン
13
ナポレオンの生涯や功績等について深いことを知りたい人には物足りない内容だと思うが、ざっと学ぶにはよい本。イタリア戦役、エジプト遠征、ブリュメール18日のクーデタはやや分量が多く記述され、他はさらっと言う感じ。基本的にあっさりとした書きぶりのため、ナポレオンの血湧き肉躍る活躍を期待して読むものではない。基礎知識は頭に入ったの思うので、『ナポレオン言行録』など別の本にも挑戦したくなった。2020/12/31