出版社内容情報
新規制基準によって原発の再稼働審査を行っている原子力規制委員会。政権や経済界からのプレッシャーを前に、独立かつ中立でいられるか。その組織構造と活動内容を批判的に検証し、あるべき原子力規制システムを考える。
内容説明
福島第一原発の過酷事故をきっかけに作られた原子力規制委員会は、「世界一厳しい」と称する新規制基準を作り、再稼働や老朽原発の運転延長の審査を進めている。政権や経済界からのプレッシャーを前に、独立性と中立性を維持できているのか。その組織構造と活動内容を批判的に検証し、あるべき原子力規制システムを構想する。
目次
序章 フクシマ後の現実
第1章 原子力規制委員会はいかに作られたのか
第2章 原子力規制委員会とはどのような組織なのか
第3章 原子力規制委員会とはいかなる行政委員会か
第4章 原子力規制委員会は「使命」に応えているか
第5章 裁判所は「専門家」にどう向き合ったのか
終章 原子力規制システムは、どうあるべきなのか
著者等紹介
新藤宗幸[シンドウムネユキ]
1946年神奈川県生まれ。公益財団法人後藤・安田記念東京都市研究所理事長、千葉大学名誉教授。専攻は行政学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
58
『原発再稼働』で取り上げられていたので、積ん読だったものを手に取った。著者は行政学の泰斗で、この組織の法的位置づけから委員の選考、事務局である規制庁の職員の実態などの分析を通して、所詮この委員会が原子力を推進するための機関に過ぎないことを喝破している。民主党時代からその傾向はあり、安倍政権になって前のめりに近い状態になっている様子がうかがえる。また、裁判所の判断についても、最高裁の伊方裁判判決の言う「専門家の判断」に踏み込めない様子が見える。ただし地裁の判決が2極化することに期待もあるとのこと。2022/09/03
coolflat
19
3.11当時、原発の安全規制権限は、経産省の原子力安全保安院に担われていた。一方で、内閣府には原子力安全規制機関をチェックするとして原子力安全委員会が存在した。だが、保安院は経産省の一部局であり、原子力安全委員会は内閣府の付属機関であったため、その組織的自立性は低かった。原子力安全規制のダブルチェック体制とは名ばかりであり、原発推進のアクセルと安全規制のブレーキは未分化といってよい状況にあったのである。こうした組織体制を改革するとして、従来の保安院と原子力安全委員会を廃止して、原子力規制委員会が発足した。2018/08/17
ベンアル
11
以前、図書館で読んだ本を購入して再読。福島事故前後の原子力規制について紹介している。事故以前は経産省傘下に原子力安全保安院、内閣府傘下に原子力安全委員会、東電の事故隠しを受けてJNESがあり、それらが原子力規制委員会として統合されたが、職員は変わらず、旧態依然のように感じた。2024/02/25
ゆきまさくん
5
3.11を契機に、それまでの内閣府原子力安全委員会と経済産業省原子力安全・保安院を廃止し、機能を統合した原子力規制員会が発足した。ここは国家行政組織法第三条に基づく行政委員会だが、独立性・中立性は担保されているとみるが、筆者はそうはみていない。世界一厳しいとされる新規制基準のもと、再稼働の設置許可の進展はなかなか進まない実情だが、筆者はまだまだ不十分とみる。リスクは極めて最小限に抑えるべきは至極当然であるが、ゼロとするのは何においても非現実的だ。厳しくかつ実際的なたゆまぬ改革は必要かと。2018/10/27
Humbaba
5
原子力は非常に強い力を持っている。だからこそその力の向く方向をしっかりと制御しなければいけない。通常の状態であれば制御できるものも、災害などの突発的な事象についてはどこまでやっても完全ということはない。また、影響が大きくなればなるほど自分の望む方向に捻じ曲げようとする集団も増えてしまい、独立性は保ちにくくなる。2018/02/26